護謨毬ごむまり)” の例文
大きな護謨毬ごむまりを投げ付ける様に、うしろからぶつかって来る風のかたまりがあっても、鼠色のソフトを飛ばすまいと頭に手をったり
乗合自動車 (新字新仮名) / 川田功(著)
そして自分が不在るすの間に、日本の土地が護謨毬ごむまりで造り更へられでもしたかのやうに、注意ぶかい、歩きぶりをして、港の埠頭はとばに下りてゐた。
それからおなものをもうひと主人しゆじんまへいて、一口ひとくちもものをはずに退がつた。木皿きざらうへには護謨毬ごむまりほどなおほきな田舍饅頭ゐなかまんぢゆうひとせてあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
一度は押詰められても、屹度きつとその人が押返して来る。又護謨毬ごむまりのやうなものを押してくぼませて見る。離せば屹度もとに戻る。さういふ心理状態である。
生滅の心理 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
糸のたるんだ風船と空気のぬけた護謨毬ごむまりはタマに噛ませてやりませう
都会と田園 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
もしか兵隊さんの大きなつらが窓越しにのぞきでもしようものなら、みんな護謨毬ごむまりのやうに一度に腰掛から飛上とびあがつたかも知れない。
枕元まくらもとを見ると、八重の椿つばき一輪いちりんたゝみの上に落ちてゐる。代助だいすけ昨夕ゆふべとこなかで慥かに此花の落ちるおとを聞いた。彼の耳には、それが護謨毬ごむまりを天井裏から投げ付けた程に響いた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
地べたを護謨毬ごむまりか何ぞのやうに感じるほど神経質になるものだが、ある年の新学期にエエル大学に入つて来た若い人たちのなかに、とりわけ神経質の学生が一人あつた。