した)” の例文
彼は停留所の前にある茶店で、写真版だの石版だのと、思い思いに意匠をらした温泉場の広告絵を眺めながら、昼食ちゅうじきしたためた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ひる飯には三本のお酒の注文があり、その他に餅菓子の注文もした。名所絵葉書十枚、巻紙封筒をも取寄せて両人はしきりに書面をしたためていた。
芳川鎌子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
したためんとするに先よりかたはらにさけ呑居のみゐたりし後藤半四郎は長八が話しを聞夫は何にしてもどくなる事なり併し其金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ほんの仔豚の肉だけという極く軽い夕食をしたためると、さっそく彼は着物をぬぎすてて、夜具やぎの中へもぐりこむなり、ぐっすりと深い眠りにおちた。
人の頭上に落ちてくるという事実をしたたむるのです、僕の身の上のごとき、まったくそれなので、ほとんど信ずからざるあやしい運命が僕をもてあそんでるのです。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
折柄おりから秀吉は征韓の志を起し、武備兵糧を充実させた時であったから、天性の豪気いよいよ盛んに、直ちに右筆をして、呂宋ルソン総督マリニャス宛ての勧降の書をしたためしめ
十二時すぎになると、抱月氏を祭った仏壇のまえでひそひそと泣いていたが、それは抱月氏の永眠後毎日のことで、遺書は四時ごろにしたためられた。
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
みんかしこまって六字の名号みょうごうしたためた。咲子は見ちゃいやよと云いながら袖屏風そでびょうぶをして曲りくねった字を書いた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
書加へられよと申に長兵衞かしこまり候と其處そこ馬喰町ばくろちやうにて八十二間組けんぐみの公事宿だけあれば筆をふるつて願書をしたため直に翌朝よくてう南町奉行大岡越前守殿へ訴訟うつたへいでしかば越前守殿には願書を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
したためんと用意よういにこそはかゝりけり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)