たづ)” の例文
〔譯〕一歴史れきし、皆形迹けいせきつたへて、情實じやうじつ或は傳らず。史を讀む者は、須らく形迹にいて以て情實をたづね出だすことを要すべし。
榛軒の妻志保はこれに生父の誰なるかをたづねむことを請うたが、此探討には何の効果も無かつた。事はかみに詳記してある。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
君はもとよりも四七聡明そうめいの聞えましませば、四八王道わうだうのことわりはあきらめさせ給ふ。こころみにたづまうすべし。
吾等は其の郷土の美と傳來の藝術の何たるかをたづね究めやうとすれば是非とも京都の風景と生活とに接觸して見なければならないと云ふやうな事を書きしるした。
十年振:一名京都紀行 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
然れども此二思想の内部精神をたづぬれば、其一は公共的の自由を経験と学理とによりて確認し、且握取せる共和思想なり、而して其二は、長上者の個人的の自由のみを承認して
われは大統領ドオジエたち輪奐りんくわんの美をたづねて、その華麗を極めたるむなしき殿堂を經𢌞へめぐり、おそろしきいき地獄の圖ある鞠問所きくもんじよを觀き。われは彼四面皆ふさがりたる橋の、小舟通ふ溝渠の上に架せられたるを渡りぬ。
わたくしの無利害の述作とは違ふ。近ごろ今関天彭いませきてんぱうさんの先儒墓田録は物徂徠の裔を探り市野迷庵の胤をたづねて、窮め得らるべき限を窮めてゐる。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
粋様の系統をたづぬれば、平安朝の風雅之れが遠祖なり。語を換へて言へば、日本固有の美術心より自然的屈曲を経てこゝに至りしなり、しかして其尤も近きしんは、戯曲と遊廓とにてありしなり。
一一四玲瓏れいろうとしていたらぬくまもなし。一一五ひとつともおもふころ、あるじの僧眠蔵を出でて、あわただしく一一六物をたづぬ。たづね得ずして大いに叫び、一一七禿驢とくろいづくに隠れけん。
巻九けんのくに「楸樹」の詩三首があつて、鵬斎の書する所は其一であつた。わたくしは進んで楸の何の木なるかをたづねた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)