色光沢いろつや)” の例文
むかふからくるまけてた。黒い帽子をかぶつて、金縁きんぶち眼鏡めがねを掛けて、遠くから見ても色光沢いろつやい男がつてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
色光沢いろつやの悪い皮膚が、脂じみたまま、険しい顔の骨を包んで、霜に侵された双髩さうびんが、わづかに、顳顬こめかみの上に、残つてゐるばかり、一年の中に、何度、床につくか、わからない位ださうである。
酒虫 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
今日けふは大久保迄行つて見たが、矢っ張りない。——大久保と云へば、ついでに宗八さんのところつて、よし子さんにつてた。可哀さうにまだ色光沢いろつやわるい。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
成程さう思つて見ると、うかしてゐるらしくもある。色光沢いろつやくない。眼尻めじりに堪へ難いものうさが見える。三四郎は此活人画から受ける安慰の念をうしなつた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かわいそうにまだ色光沢いろつやが悪い。——辣薑性らっきょうせいの美人——おっかさんが君によろしく言ってくれってことだ。しかしその後はあの辺も穏やかなようだ。轢死れきしもあれぎりないそうだ
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
色光沢いろつやがよくない。目尻めじりにたえがたいものうさが見える。三四郎はこの活人画から受ける安慰の念を失った。同時にもしや自分がこの変化の原因ではなかろうかと考えついた。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
色光沢いろつやも殆んどもとの様に冴々さえ/″\して見える日が多いので、当人もよろこんでゐると、帰る一ヶ月ばかり前から、又血色けつしよくが悪くなりした。然し医者の話によると、今度のは心臓のためではない。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
平岡の細君は、色の白い割にかみの黒い、細面ほそおもて眉毛まみへ判然はつきりうつる女である。一寸ちよつと見ると何所どことなくさみしい感じの起る所が、古版こはんの浮世絵に似てゐる。帰京後は色光沢いろつやがことにくないやうだ。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)