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良家
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りやうか
キヤツと
叫びて
倒るゝを、
見向きもやらず
通りしは、
優にやさしき
人の、
黄楊の
櫛を
唇に
銜へしなり。うらぶれし
良家の
女の、
父の
病氣なるに、
夜半に
醫を
乞へる
道なりけり。
尤も柏亭君の滞在は長かつたから
良家の女を見た上の批評だらうが、僕の短い
逗留中では先刻迎へに出て
呉れたホテルの
一人娘を除いた
外に美しいと思ふ女は見当らなかつた。
相当な
身柄の
家に
育つただけに青木さん
夫婦は
相方共に品のいい十人
並な
容姿の
持主で、
善良な
性格ながらまた
良家の子らしい、矜
持と、
幾らか
見えを
張るやうな
氕質もそなへてゐた。