至尊しそん)” の例文
武家の大逆もさることながら、ここしばしは、日月じつげつくろうなり、至尊しそんたりとも、あめしたにお身を隠す所すらない乱れを地上にみるでしょう。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
殊に天上天下唯我独尊の釈迦牟尼如来にょらい至尊しそんの王位と金殿玉楼すなわち天下の富貴ふうきを捨てて破衣はえ乞食こつじきの出家となって我ら一切衆生しゅじょうのために身命をなげうって御修行せられたことを思いますと
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
帝室にしてくその地位を守り幾艱難いくかんなんのその間にも至尊しそんおかすべからざるの一義をつらぬき、たとえばの有名なる中山大納言なかやまだいなごん東下とうかしたるとき、将軍家をもくして吾妻あずまの代官と放言したりというがごとき
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
功烈こうれつ尤も多かりしは前内府ぜんないふ至尊しそん直に鶴城かくじやうの中に在り」と。
その不忠節は、前代義輝よしてる将軍も同様であったが、わけても当今至尊しそんにつかえまつる念がうすく、幕臣どもみな王事を閑却かんきゃくしているふうがある。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
といって、だれを一天の至尊しそんと仰ぐか。ともあれ宋朝そうちょう御代ごだいはこんにちまで連綿と数世紀この国の文明を開拓してきた。その力はじつに大きい。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「さにあらず、尊氏みずから思い立った火急の何かをもって、至尊しそんを驚かし奉ったという由を洩れききまする」
然しこの国家は永遠のものだ、今生きつつあるわれ等だけの生涯のものではない。しかも将軍家は、その司権を、至尊しそんからおあずかりしているに過ぎない。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし縫之助秀正がいま見たものは、昨日までは至尊しそんと仰がれた君と三人の妃が、わずかにし入る日光の下に相擁あいようして八寒の獄をいたわりうている姿だった。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「だまれ。かりそめにも至尊しそん御子みこ。しかも陪臣ずれの無慈悲な刃で殺し奉る法があろうか」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その上人しょうにんの口からも、高氏は親しく、至尊しそんのお身まわりのこと、大塔ノ宮のこと、公卿山門の実状などを、つぶさに伺い、後日のためには、よい知識を居ながらに受けていた。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
われら君側は、ただに主上を至尊しそんと仰ぎ奉るだけでなく、天地の神祇しんぎにかけて、一死のちぎりは常にこうなのだ。さもなくて、何でかほどな大事を挙げえようぞ。……が、聞かれよ正成。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「無礼なるぞ、貞満っ。ひかえろ、ひかえろッ。かしこくも至尊しそんにたいし奉ッて!」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
信長のを誇った示威じいでもあり、また、外人宣教師などに対する国際的意味も多分にあったが、もっと、重大な意義としては、親しく至尊しそん臨御りんぎょを仰いで、兵馬の大本を明らかにしたことであった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なぜ天皇を至尊しそんと仰ぐのか