能弁のうべん)” の例文
旧字:能辯
ト末の方はもはや命令的に、早口に能弁のうべんにまくし立てた。そのあとについて和尚は例の小さな円い眼に力を入れて睜開そうかいしながら
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
これがフランスじんの会合であったならば、雄弁ゆうべん能弁のうべんジェスチュアその他ドラマチックの動作どうさがさだめしみごとなものであったろうと想像さる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
羽柴秀長は、藤堂高虎にはかって、もう敵方も参ったであろうと、能弁のうべんな一臣下を、使いとして、敵の一拠点いちきょてん、丸山の陣へ
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
突然柿江が能弁のうべんになった。彼が能弁になるのは一種の発作ほっさで、無害な犬が突然恐水病にかかるようなものだ。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
このあいだにもゴルドンは例の日課の勉強だけは一度も休まなかった、一週に二度の討論会とうろんかいもつづけた。討論会ではいつもドノバンが能弁のうべんをふるって一同をけむにまいた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
鹽原君大得意の能弁のうべんを以て落語二席をはなす、そのたくみなる人のおとがへき、く当日の疲労ひろう寒気かんきとをわすれしむ、其中にもつねに山間に生活せいくわつする人夫輩に至りては、都会に出でたるのかんおこ
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
いそがしい父の小閑ひまを見てはひざをすりあわせるようにして座りこんでいた。いつも鉱山やまのことになると訥弁とつべん能弁のうべんになる——というより、対手あいてがどんなに困ろうが話をひっこませないのだ。
旧聞日本橋:08 木魚の顔 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
この犬ののふり方にはたいていの人のしたや口で言う以上いじょう頓知とんち能弁のうべんがふくまれていた。わたしとカピの間にはことばはらなかった。はじめての日からおたがいの心持ちはわかっていた。
いかにその演説が教育に関係するを要しないとても、青年が主賓しゅひんになっている以上は、まねかれる弁士はただ能弁のうべんだとか悧口りこうだとかいうだけの資格では足りない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
誰かに聞いてもらいたいと思っている矢先だったので、婆やは何事をおいても能弁のうべんになった。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
この席に来た人々は日本に関する知識を求めに来たので、決して雄弁ゆうべん能弁のうべんを聴くつもりで来たのでない。日本人が英語をあやつるのであれば、さだめしブロークンな英語であろう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)