胴着どうぎ)” の例文
そこには、赤い布地きれじでつくった古風こふう百姓ひゃくしょうの着物——みじか胴着どうぎ、ひだのあるスカート、真珠しんじゅかざりのついた胸着むなぎ——がいくつか入れてありました。
まる洗いにした胴着どうぎが暖かい日の光を受けてぶら下がっているのを見ると葉子はもうたまらなくなった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
人間ともさるともつかない顔付かおつきをし、体のわりには妙にひょろ長い手足の先に、山羊やぎのようなひずめが生えていて、まっ黒な一重ひとえの短い胴着どうぎすそから、小さな尻尾しっぽがのぞいていました。
天下一の馬 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
私の友達に横浜よこはま商人あきんどなにかで、うちはなかなか派出はでに暮しているものがありましたが、そこへある時羽二重はぶたえ胴着どうぎが配達で届いた事があります。するとみんながそれを見て笑いました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
玉蟲染たまむしぞめ天鵞絨びろうどのやうな薔薇ばらの花、あかの品格があつて、人のをさたる雅致がちがある玉蟲染たまむしぞめ天鵞絨びろうどのやうな薔薇ばらの花、成上なりあがりの姫たちが着る胴着どうぎ似而非えせ道徳家もはおりさうな衣服きもの僞善ぎぜんの花よ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
もとの家老とかの屋敷やしきを買い入れて、そのまま開業したという話だが、なるほど見懸みかけからしていかめしい構えだ。家老の屋敷が料理屋になるのは、陣羽織じんばおりい直して、胴着どうぎにする様なものだ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)