耀かが)” の例文
緋縅ひおどし大鎧おおよろいて、竜頭りゅうず金鍬形きんくわがたの付いたかぶとをかぶって、連銭葦毛れんせんあしげの馬に乗った美しい若武者が迎えに来る、光り耀かがやくような若い大将が、それがお登女の花婿である。
似而非物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
耀かがよい出すという風にややつかれた肉体の上にあやとなって出る精神のつや、微妙な知慧のつやというようなものは、実に見おとすことの出来ない、真の人間らしい一つの花です。
「なるほど」と青年は、耀かがやく眼をげて、道也先生を見たが、先生は宵越よいごし麦酒ビールのごとく気の抜けた顔をしているので、今度は「さよう」と長く引っ張って下を向いてしまった。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私たちはフレップを摘み、トリップを探してまた心ゆくままに味い、かつ夢みた。そうしてまた耀かがやかで涼しい風と光と色と音とをもまた十分に新鮮に食らい過ぎるくらいに食らった。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
なんせ私の知ってる今日までの光子さんいうたら、花やかで、勝ち気で、いつもプライドにちた眼エ耀かがやかしてなさって、そんなつらい思いしてなさったとはちょっとも見えしませんのに
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
黄金こがね耀かがやかしなば、そのくさり
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
朝の耀かがやきはじめた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「こうすると引き立ちますよ」と云ってもとの席に返る。小野さんの胴衣チョッキの胸には松葉形に組んだ金の鎖が、ボタンの穴を左右に抜けて、黒ずんだメルトン地を背景に燦爛さんらん耀かがやいている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そこには、女として、日本の男への不承知の感情もひそんでいるのだったけれども、何と妙だろう——伸子は、銀灰色の絹びろうどのさざ波の上に耀かがやいている一個の腕環を見つめながら思った。
道標 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
幹太郎は眼を耀かがやかせた。
花も刀も (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
耀かがよふ玉のその
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
せまる太陽は、まともに暖かい光線を、山一面にあびせて、眼に余る蜜柑の葉は、葉裏まで、かえされて耀かがやいている。やがて、裏の納屋なやの方で、鶏が大きな声を出して、こけこっこううと鳴く。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)