繁茂しげ)” の例文
この小さな、緑色に繁茂しげり栄えた島の中には、まれに居る大きなありのほかに、私たちを憂患なやまとりけもの昆虫はうものは一匹も居ませんでした。
瓶詰地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
はっと、うしろを振り顧ると、紫陽花あじさい繁茂しげっている崖の中腹に、黒い、覆面の魔物が、肩先を見せて、逃げかけた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かたへに一ぽんえのきゆ、年經としふ大樹たいじゆ鬱蒼うつさう繁茂しげりて、ひるふくろふたすけてからすねぐらさず、夜陰やいんひとしづまりて一陣いちぢんかぜえだはらへば、愁然しうぜんたるこゑありておうおうとうめくがごとし。
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その星明ほしあかりで庭の景色もおぼろに見える、昼はのみとも思わなかったが、今見ると実に驚くばかりの広い庭で、植込うえこみの立木はまるで小さな森のように黒く繁茂しげっているが、今夜はそよとの風も吹かず
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)