練馬ねりま)” の例文
男の車は池袋いけぶくろから豊島園としまえんをすぎて、練馬ねりま区の畑の中へはいっていきました。もうそのころは、日がくれて、あたりはまっくらでした。
電人M (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その晩親仁おやじの松蔵が練馬ねりまへ行くはずだから、疑いは万に一つも親仁へ懸るはずはないと思い込み、犬まで殺して仕事に取りかかったが
「もうじきに、練馬ねりまの、豊島園としまえんの裏へつくったうちへ越すので『女人芸術』のと、あなたのとのはんをこしらえてあげたいって。」
江木欣々女史 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
切りたるぞはやとらへ給はれと云ふ間あらせず重四郎は心得たりと一たうひらりと拔より早く練馬ねりま藤兵衞を後背うしろよりばつさり袈裟掛けさがけに切放しければ是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「地大根」と称えるは、堅く、短く、かぶを見るようで、荒寥こうりょうとした土地でなければ産しないような野菜である。お雪はそれを白い「練馬ねりま」に交ぜて買った。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
練馬ねりまあたりから雇い入れた女中ではあるが、この女中は少しく痴呆性ちほうせいの女で、それにつんぼときているから、化物屋敷にいて、化物の物凄いことを感得することができません。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
今宵のお寺は、練馬ねりま宇定寺うていじで、覘う一件は、唐の国から伝来の阿弥陀如来像あみだにょらいぞうであった。月はかなりふくらんで中天に光を放ち、どこからともなく花の香のする春の宵であった。
大亀は、練馬ねりまへ出てしまっていた。板橋街道から本郷森川口の方へ向ってくる所で、初めて阿能は? ——と見まわしたが、どこでわかれてしまったか、かれの姿は前にも後にも見えなかった。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あとは下男の寅藏といふのが居りますが、これは六七日前から練馬ねりまの實家へ親が病氣で歸つて居ります」
立去んとて雲を霞と駈出しける扨又金兵衞の子分八田掃部かもん練馬ねりま藤兵衞三加尻みかじり茂助の三人はあと
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そんなこと言ったことのない人でしたが、よっぽどさびしくなったのだと見えて、練馬ねりまうちには離れも二ツあるから、一緒に住まないかとも言いました。二男を子にくれないかともいいました。
江木欣々女史 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
あの練馬ねりまあたりの大根を見た目には、これでも大根かと思われるほど、ずっと形もちいさく、色もそれほど白くなく、葉を切り落とした根元のところはかぶのような赤みがかった色のものです。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
いつか、道はもう練馬ねりまの里。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、お前にも恐しい當て違ひがあつた。——その晩親仁の松藏が練馬ねりまへ行く筈だから、疑ひは萬に一つも親仁へ懸る筈はないと思ひ込み、犬まで殺して仕事に取かゝつたが、運惡く親仁の松藏が腹痛を
隱しませう其品そのしな葬禮さうれいの時のをさめ物なれども然樣さやう申上なば御うたがひがかゝらうかと存じ重代ぢうだいの品と申上しかどじつ死人しにんをさめ物なりと申ければ役人扨々さて/\なんぢは不屆き者なり此脇差は中仙道なかせんだう鴻の巣の鎌倉屋金兵衞と云者の所持しよぢの品にて其子分なる練馬ねりまとう兵衞と云者に貸遣かしつかはしたる脇差なり然る所其みぎ藤兵衞ほか二人の行衞ゆくゑ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「氣の毒だが八、もう一度練馬ねりまへ行つてくれないか」
練馬ねりまの文七の兄のところに居ります」