素因そいん)” の例文
実に、水攻めの成功を確信し得る素因そいんは、なによりもその高松城が平城ひらじろ式なる上に、石垣もわずか二間しかないところにあった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
拙劣せつれつな変調装置を使うとか、マイクロホンがよくないとか、増幅装置ぞうふくそうちがうまいところで働いてないとか、そういう素因そいんによって音声はゆがめられる。
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
もしもベーリング氏の説の通りに結核病の素因そいんが牛乳にありとすれば我邦の如き衛生思想の乏しい社会では政府が自ら牛乳搾取業を始めて純良牛乳ばかりを
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
れが實際問題じつさいもんだいになると、土地とち状態じやうたい風土ふうど關係くわんけい住者ぢうしや身分みぶん境遇きやうぐう趣味しゆみ性癖せいへき資産しさん家族かぞく職業しよくげふその種々雜多しゆ/″\ざつた素因そいん混亂こんらんしてたがひあい交渉かうせうするので
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
前後の事情を回想すれば感極まりて唯涙あるのみ。畢竟ひっきょう時運のしからしむる所なりと云うも、素因そいんなくして結果はあるべからず。吾々は今日に居て只管ひたすら先人の余徳その遺伝のたまものを拝する者なり。
北畠の家中へも、徳川方の内部へもかれはあらゆる機会をとらえては、内紛ないふん内訌ないこう素因そいんを植えて来たのである。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
独逸どいつの有名なるベーリング氏は本年九月の万有学会で結核病の発生に関する研究報告を致しましたが肺結核発生の本元即ち素因そいんは乳児の乳汁にありといわれました。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
しかしこのとき隆夫は、父親のおどろきとなった素因そいんのすべてを知っているわけではなかった、披は、まだ霊魂界のことについては、ほんのわずかのことしか知らないのであった。
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
亡ぶものは亡ぶ素因そいんを多分に持って、当然な崩壊ほうかいの一瞬に来るのであるが、その瞬間には、自他共に
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし把柄が握られていないときはスイッチが入って、鞄は例の素因そいんにより万有引力にまさって浮きあがる——つまり鞄とその中身との重さが一枚の羽毛ほどの重さに変わってしまう。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
わしにいわせれば、光秀の謀叛むほんは、一夜に大熱を発した狂病じゃよ。熱を起すも病症をあらわすも、その心身に素因そいんを持っているからであるが、まあ半分は病勢が手伝ったのじゃ。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
要するに、第二又は第三の素因そいんによって、仔猫が宙を飛び、鞄が空を走るものと推定し得られないことはない。赤見沢博士のユニークな頭脳はそれを装置化することに成功したのではないか。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
今日の庶民の気もちをとらえた大きな素因そいんがあるものとられた。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)