糺明きゅうめい)” の例文
とにかく明朝、あの浅田とやらいう人足を役所に呼び出し、きびしく糺明きゅうめいしてやろうと、すこぶ面白おもしろくない気持でその夜は寝た。
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「それまで充分に稽古をして、いま平助が申すとおり必ず村松に勝つのだ、沖田とのことはその後で糺明きゅうめいする、わかったな、わかったら立て」
恋の伝七郎 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
よくよく糺明きゅうめいして見ると、実は今月末こんげつすえとかに開場するんで、何をやるんだか、その日になって見なければ、総裁にも分らないのだそうである。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
アッシェンバッハは、なかばうっかりと、なかば糺明きゅうめいするように、この見知らぬ男を熟視しながら、おそらくつつしみを欠いてしまったのであろう。
帰ったら、糺明きゅうめいしてやろう。お磯がよくない。どこかに置いて、も一度、詫びをさせて家に入れるつもりだろう。
べんがら炬燵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とにかく自分だけで、Sの正体を糺明きゅうめいしなければならぬ。Sとは何か? それにしきりに考え耽っていて、つい電車を乗り越すことさえありました。Sとは何か?
Sの背中 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
それを引捕えて糺明きゅうめいしようというのは、主膳の仕業しわざとしては有り得べきことに違いないが、それにしても、生きながら井戸へ投げ込むというのはあまりに惨酷である。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
で、まだそこらにまごまごしていたら、引捕まえて糺明きゅうめいしてやろうと、今日出たついでに、そちらへ廻ってみた。なに、天神下の湯女の宿は三軒しかないからすぐ分ったがね。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
露骨に云えば彼女の貞操その物よりも、ずっとこの方が頭痛の種でした。彼女を糺明きゅうめいし、あるいは監督するにしても、その際に処する自分の腹をあらかじめ決めて置かなけりゃならない。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
私はもともと神でもなければ仏でもなく、ただ非情の黄金の精です。非情のものとして人間の善悪を糺明きゅうめいし、その結果にしたがって、私が行動しなければならない理由はありません。
しばらく宥恕ゆうじょいたし候につき、すみやかに姦徒かんとの罪状を糺明きゅうめいし、厳刑を加うべし。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そればかりでなくその女子の良人というのは木曽家の大智者、花村甚五衛門の伜の右門。そう知りましたので引っ捕らえ連れ参ったのでござります。もしも糺明きゅうめい遊ばしたなら木曽の館の内情を
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
悔悟すれども膺懲ようちょうの奇策なければ淪胥りんしょともほろぶるの外致し方なし。はたまた京師の一条も幕府最初の思い過ちにて、追々糺明きゅうめいあればさまで不軌ふきを謀りたる訳にこれ無く候えば、今また少しく悔ゆ。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
続いて酒井家の大目附から、町奉行の糺明きゅうめいが済んだから、「平常通心得へいじょうのとほりこころうべし」と、九郎右衛門、りよ、文吉の三人に達せられた。九郎右衛門、りよは天保五年二月に貰った御判物ごはんものを大目附に納めた。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
糺明きゅうめいいたそうではないか
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
『いつまでも寝ないで、困った大人共でござる。伝右どの、その手輩てあいに、あしたは糺明きゅうめいしておやりなされ』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
憂鬱ゆううつにちかい気持でこの洗面所に来てみると、マア坊が、あんまりなまめかしかったので、男子として最も恥ずべきやきもちの心が起り、つい、あらぬ事を口走って、ただちにマア坊に糺明きゅうめいせられ
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
責任者をただしていること、また、事務にかかわった当番兵七名を、お旗箱が出なければ、切腹させるつもり、営倉に糺明きゅうめいさせていることなどを、早口に、云いたてて
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これはおれを意見するために、仕置しているのだ。糺明きゅうめいだから、晩にはゆるされる。——それを貴様たちが、おれのいうこともきかずおれを苦しめるなら苦しめてみろ。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なまぬるいっ。そんな詫言わびごとで済もうか。そちと、お麗の糺明きゅうめいは、後でする。——まず修蔵だ」
べんがら炬燵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「八十三郎っ、なぜ、縄をかけておかんかっ。なにっ? 兄に縄はかけられんと。ばかっ、じょうは情、武士道は武士道、よしっ、わしが糺明きゅうめいしてやる。細引を出せっ、細引を」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「はッ、いかさま。それまでには気がつきませんでした。さっそく、糺明きゅうめいいたしてみます」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
またひそかに客を揚げて、かような時とばかり、営利をむさぼる楼主の不謹慎はなおもってゆるし難い。追っつけ、楼主には後より糺明きゅうめいを申しつけるが取りあえず、その客をここへ出せ
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「親父に糺明きゅうめいされて、切腹をする代りにと、叔父貴おじきの手で坊主にされたときは……」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いまさら糺明きゅうめいするわけではないよ。ものの順序として訊くのだ。誤解するな」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「くせになる。うんと糺明きゅうめいしてやるから来い。お父さんのところへ来い」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『言語道断な内匠頭の振舞、但馬、糺明きゅうめいせい』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)