糸目いとめ)” の例文
旧字:絲目
江戸は八百万石のお膝下ひざもと、金銀座の諸役人、前にいった札差ふださしとか、あるいは諸藩の留守居役るすいやくといったような、金銭に糸目いとめをつけず、入念で
大道で、良人が凧を売れば、共に顔をさらして糸目いとめをつけた彼女。草雲が、いつ出かけても、酔って帰っても、嫌な顔一つ見せたことのない彼女。
田崎草雲とその子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは正月を目の前にひかえて、せわしくなった凧屋たこやでした。凧屋の主人は、店の中にひとりすわってはり上げた凧に糸目いとめをつけたり、骨組ほねぐみをなおしたりして働いていました。
清造と沼 (新字新仮名) / 宮島資夫(著)
きみ糸目いとめうえにしなければだめだ。」と、いいながら、まちほうんでゆきました。
西洋だこと六角だこ (新字新仮名) / 小川未明(著)
いつのとしでしたかわたくしの乗りました車夫くるまや足元あしもとからへた紙鳶たこ糸目いとめ丁寧ていねいに直してりましたから、おまい子持こもちだねと申しましたら総領そうりようなゝつで男の子が二人ふたりあると申しました
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
この、万事金に糸目いとめをつけないやり方で、最初の利がかえるまで、三年もとうというのだから、骨だ。若松屋惣七も、許す限りの才覚をして、江戸から応援したのだが、むだだ。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「金に糸目いとめはつけない。世帯を持てば何うせ五十五円じゃ足りないんだ」
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「待て待て、糸目いとめの切れたたこみたいな野郎だ」
と思うと——一しゅんのまに、鷲はいようなばたきをして、糸目いとめのからんだたこのように、クルクルッとくるいはじめた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)