簇々ぞくぞく)” の例文
技術派の方へ加担をするものがかえって多くなって、同情が高まり、旭玉山、石川光明氏等へ味方するものが簇々ぞくぞくと出て来ました。
ところが、またふたたび、同じような馬蹄の音が、町の方から聞えて来た、簇々ぞくぞくとかたまり合って駆けて来る具足のひびきも耳をつ。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
現に今日も、この卓子テエブルの上には、とうの籠へ入れた桜草さくらそうの鉢が、何本も細い茎をいた先へ、簇々ぞくぞくとうす赤い花をあつめている。……
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
商工業の如きも解放された。解放されてみると、自己の機能を発揮して、一個人で大工業、大商業を起すものが簇々ぞくぞくと出て来るようになった。
松は墓標の上に翠蓋すいがいをかざして、黄ばみあからめる桜の落ち葉点々としてこれをめぐり、近ごろ立てしと覚ゆる卒塔婆そとば簇々ぞくぞくとしてこれをまもりぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
青い物の芽が簇々ぞくぞくと生えてそれが茎になり葉になった。それは蕎麦そばであった。白い花がすぐ開いた。赤い茎がそれと映り合った。やがて花が落ちて黒い実が一面に見えてきた。
蕎麦餅 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
簇々ぞくぞくと有為新進の担当者を送りこむためのベース・キャンプとなった。
福沢諭吉 (新字新仮名) / 服部之総(著)
簇々ぞくぞく
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
鏘々しょうしょう甲冑かっちゅうのひびきが聞える。明らかに簇々ぞくぞくと兵団の近づくような地鳴りがする。すわと、にわかに信玄のまわりは色めきたった。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
磯山いそやまの若葉の上には、もう夏らしい海雲かいうん簇々ぞくぞくと空に去来していると云う事、その雲の下に干してある珊瑚採取さんごさいしゅの絹糸の網が、まばゆく日に光っていると云う事
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
見物は相不変あいかわらず、日傘の陰にも、平張ひらばりの下にも、あるいはまた桟敷さじきの欄干のうしろにも、簇々ぞくぞくと重なり重なって、朝からひるへ、午からゆうべへ日影が移るのも忘れたように
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
親鸞の師弟がつえをついた地方——たとえば越後、信州、上州、武州などの各地にも、かれてあった胚子たねが、春に会ったように、簇々ぞくぞくとなり、ふた葉となり樹となり花となって
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
丁子は銅像をめぐった芝生の上に、うららかな日の光を浴びて、簇々ぞくぞくとうす紫の花を綴っていた。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
紅蓮白蓮ぐれんびゃくれんの造り花が簇々ぞくぞくと咲きならんで、その間を竜舟りゅうしゅう一艘いっそう、錦の平張ひらばりを打ちわたして、蛮絵ばんえを着た童部わらべたちに画棹がとうの水を切らせながら、微妙な楽のを漂わせて、悠々と動いて居りましたのも
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)