かく)” の例文
あの折、もし新田殿が、都へのご凱旋がいせんなどなく、筑紫つくしまでもと、尊氏を追いつめて行きましたなら、御勝利はかくたるものとなっていたでしょう。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
またある学者は、それは枝の変形したものにほかならないととなえた。これらの学者のいう説にはなんらかくたる根拠こんきょはなく、ただ外からた想像説でしかない。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
るものなりやといはれしかば本郷三丁目徳兵衞だな住居ぢうきよなし日々雇ひ候者なれども心底しんていかくと存じ申さず越後邊の出生しゆつしやうの者と申立しにより大岡殿以後手懸てがゝりともならんかと樣子やうす
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その末の弟の王かくというのは大酒飲みの乱暴で、亡き兄の妻や幼な児をさんざんに苦しめるのであるが、どうにも抑え付けようがないので、一家は我慢に我慢して日を送っていた。
青インキで、「かく」と、大きく、帽子のように、上部に一字あるのは、当選確実者だ。最高点は、矢崎新兵衛、二七四票、その他、民政党連中は、ほとんどが、「確」の冠をかぶっている。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
かくたる今後の方針をどうするか、それをきめて置かなければならない。
幽霊船の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
おもせまこゝろざしかくたり。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
「かたじけない」と、宋江はしばしうなじを垂れて——「どこといって、さし当りかくたるあてもないが、思いうかぶのは第一に滄州そうしゅうの名士、小旋風しょうせんぷう柴進さいしん
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いや、お互い武士ほどはかないものはありません。——が、その儚い中に、かくと、生きて来ただけの足跡を
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ウ、ウム」と膝をのりだして——「今朝こんちょうも諸方から来ている書類に目を通しているのだが、ひとつとしてかくたる手がかりはない。ところで、何かそちの手で、めぼしいことがあがったか」
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「されば崩御ほうぎょは過ぐる十六日の夜と、ただいま、かくたる報なので」
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)