真実まったく)” の例文
旧字:眞實
郵便局長ゆうびんきょくちょうのミハイル、アウエリヤヌイチは、かれところて、かれはなしいてはいるが、さきのようにそれは真実まったくですとはもうわぬ。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「……真実まったくだよ……まだ驚く話があるんだ。主厨カカンの話だがね、あのS・O・S小僧ってな女だっていうぜ。……おめえ川島芳子よしこッてえ女知らねえか」
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
私は、自分では確かに正気の積りでいますし、人もまたその様に取扱ってれていますけれど、真実まったく正気なのかどうか分りません。狂人かも知れません。
赤い部屋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
上さんは、真実まったくそれがつまらない、気毒な引込思案であるかのように、色々の人々の場合などを話して勧めた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「その清二郎さんという反物屋は、この三年奥州の方を廻って来たということですが、真実まったくですかい?」
と荒唐無稽に過ぎるようですが、真実まったくで、母可懐なつかしく、妹恋しく、唯心もそら憧憬あこがれて、ゆかりある女と言えば、日とも月とも思う年頃では、全くりかねなかったのでございます。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
番「イヤ真実まったくの事だ、証拠があるぜ」
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「おふくろ、それは真実まったくか」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それやこれやを考え合わせますると真実まったくの処、蔵元屋は、今申しましたような身代の左前を取戻すために、賭博の胴親をしているものと存じますので……ヘイ……
私がお世辞を言うものですかな、真実まったくですえ。あの、その、なあ、悚然ぞっとするような、恍惚うっとりするような、めたような、投げたような、緩めたような、まあ、んと言うてかろうやら。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
アンドレイ、エヒミチはやはり相手あいてかおずに、知識ちしきあるものはなしばかりをつづける、ミハイル、アウエリヤヌイチは注意ちゅういしていていながら『それは真実まったくです。』と、そればかりを繰返くりかえしていた。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「いいえ真実まったく。私この頃つくづくあの家が厭になってしまったんです」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
『それは真実まったくです。』と、郵便局長ゆうびんきょくちょうう。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
姐御あねご真実まったくだ、たまらぬ。
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)