白綾しろあや)” の例文
小袖は二枚で、一枚は白綾しろあや、一枚は八端はったん、それに血のあとが残っていると云いますから、恐らく吉良が最期さいごのときに身につけていたものでしょう。
半七捕物帳:61 吉良の脇指 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
浪子は風通御召ふうつうおめし単衣ひとえに、御納戸色繻珍おなんどいろしゅちんの丸帯して、髪は揚巻あげまき山梔くちなしの花一輪、革色かわいろ洋傘かさ右手めてにつき、漏れづるせきを白綾しろあやのハンカチにおさえながら
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
小姓たちは恐懼きょうくして、ひとりはあわてて信長のうしろからその白綾しろあやのたもとを持ち、またひとりは水を汲みあらため、さらに一名は手ぬぐいを捧げてその足もとにひざまずく。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
白綾しろあやの眞新しい布團、縮緬ちりめんの寢卷など、まさに大名以上のぜいで、こんなところに大金を費つて、秘やかな誇りにほくそ笑む人種の生活を、まざ/\と見せつけられる心持です。
と見ると、藤紫に白茶の帯して、白綾しろあや衣紋えもんかさねた、黒髪のつややかなるに、鼈甲べっこう中指なかざしばかり、ずぶりと通した気高き簾中れんじゅう。立花は品位に打たれて思わずかしらが下ったのである。
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
柔らかい白綾しろあやの服の上に、薄紫の打ち目のきれいにできた上着などを重ねて、縁側に近い所へ、庭の植え込みを見るために出てすわっている姿は、決して醜い男だとは見えない。
源氏物語:52 東屋 (新字新仮名) / 紫式部(著)
おりくつ穿はきて立出ける其衣服は葵の紋を織出したる白綾しろあやの小袖を着用し其下に柿色かきいろ綾の小袖五ツを重ね紫きの丸帶まるぐけしめ古金襴の法眼袴を穿ち上には顯文紗けんもんしや十徳を着用し手に金の中啓ちうけい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
一面に気味悪く紫立って、御褥おしとね白綾しろあやも焦げるかと思う御気色みけしきになりました。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
白綾しろあやの小袖は鮮血を抱いてすでに俯っ伏している。蘭丸は武者隠しの小襖こぶすまを引いてひつぎへ納める如く信長のかばねを抱え入れ、ふたたび静かにそこを閉めて、床の間から退がった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひょう、虎の革の半袴はんばかまは捨てて、正式の折目袴に、白綾しろあやの小袖、金糸の縫紋ぬいもん、そして濃い紫地に桐もようのかみしもを着け、帯びた小さ刀も、提げた太刀も、華奢きゃしゃ風雅男みやびおのすがただった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御服ぎょふく直衣のうし指貫さしぬき白綾しろあやのおん
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)