猿眼さるまなこ)” の例文
ドンと下りざまにおおき破靴やぶれぐつぐるみ自転車をずるずるといて寄ったは、横びしゃげて色の青い、猿眼さるまなこの中小僧。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
振舞ふるまひ小遣こづかひなど與へて喜ばせ聲をひそめつゝ其方そなたの主人の娘お高殿に我等われら豫々かね/″\こゝろかくる所お高殿も氣のある容體ようすなれども御母殿おふくろどの猿眼さるまなこをして居る故はなし出來難できがたければ貴樣に此文をわたあひだ能々よく/\人目ひとめ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
小児等は同じように顔を合せて、猿眼さるまなこに、猫の目、上り目、下り目、団栗目どんぐりめ、いろいろなのがぱちくるのみ。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
見るにいつ落せしや九十兩のかね見えざりければ三吉は駭驚仰天びつくりぎやうてんして立歸り猿眼さるまなこに成て能々尋ねけれ共人通ひとゞほり多き所ゆゑ一向に跡形あとかたもなし依て又々元の手ふりとなりければふたゝび本郷の甲州屋へ行仁左衞門に右の事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
沢庵たくあんを洗い立てたるように色揚げしたる編片アンペラの古帽子の下より、やっこ猿眼さるまなこきらめかして
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
愛吉は穏かならぬ猿眼さるまなこで、きょろきょろと四辺あたりを見たが、たちまちつッと立上った。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
要こそあれ滅多あたりこぶしを廻して、砂煙のうずまくばかり、くるくる舞して働きながら、背後うしろから割って出て、柳屋の店頭みせさき突立つったった、蚰蜒眉げじげじまゆの、猿眼さるまなこの、ひょうの額の、熟柿じゅくし呼吸いきの、蛇の舌の
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わつぱ猿眼さるまなこちひさいのをると苦笑にがわらひをして
山の手小景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)