ずる)” の例文
「あのぢゞい、中々なか/\ずるやつですよ。華山くわざん僞物にせものつて押付おつつけやうとしやがるから、いましかつけつたんです」とした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
二階へひさしを渡つて入つた上、よく眠つてる金之助を當て身で目を廻させ、鎌で切り刻んだのはずるいやり方だ。足袋の始末を
「あいつもずるいがあっしも利巧りこうじゃあねえ、かたちからするとこっちが乗り出した恰好で、あいつの云い草じゃねえが、まったくなっちゃあいません」
『は。』と、言つて、ずるさうな、臆病らしい眼附で健の顏を見ながら、忠一は徐々そろ/\後退あとしざりに出て行つた。
足跡 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
放二さんは人の隙をねらうようなずるいことはできませんが、記代子さんの行方を突きとめているのです
街はふるさと (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
のら猫のずる逃脚にげあしと疑ひ深い心をもつやうになり、女房や女中が連れに行つても馴染みをれた卒気そつけないふうをした、僕はそんな猫なら打つちやつて置けと言つたが
鉄の死 (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
Williウイリー の奴をてゐると実におもしろいね。すばしこくて、短気で、ずるいところがあるかと思へば、気前きまへが馬鹿に好かつたりして、やつぱし半日本人はんにほんじんといふ処があるね』
日本媼 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
「母屋へ行け母屋へ。かまうか、俺がつれてってやろ。あいつ、ほんまにずるい奴や!」
南北 (新字新仮名) / 横光利一(著)
その間に一台のずるいタクシーが白線から飛び出したがために叱っておく必要がある。
そのにぶ容態なりふりのいづこにかずるはたらかせにやにやと笑ひつつあり。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「あのじじい、なかなかずるい奴ですよ。崋山かざん偽物にせものを持って来て押付おっつけようとしやがるから、今叱りつけてやったんです」
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あまりの勢いに呑まれて、何が何やらわからぬ主人の佐五兵衛、その後から、ずるそうな番頭の米吉も顔を出します。
と言つて、ずるさうな、臆病らしい眼付で健の顔を見ながら、忠一は徐々そろそろ後退あとしざりに出て行つた。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
さう言ふ渡し守のずるさうな顏を見ると、染五郎はツイ餘計な酒代さかてをはずまなければならなかつたことなど——今はもう悲しい思ひ出になつてしまつたのです。
そう言う渡し守のずるそうな顔を見ると、染五郎はツイ余計な酒代さかてをはずまなければならなかったことなど——今はもう悲しい思い出になってしまったのです。
二階へひさしを渡って入った上、よく眠ってる金之助を当て身で目を廻らせ、鎌で切り刻んだのはずるいやり方だ。