猪口ちよこ)” の例文
さう言ふ平次の前へ、女房のお靜は何時の間に支度をしたか、三つの猪口ちよこと人肌の徳利と、二つ三つのめ物を並べるのでした。
さ、おべよ、おまへいて芽出度めでたいからおいはひだよ、わたしがおしやくをしてげよう……お猪口ちよこ其処そこらアね。
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
え、んの少しばかしね。何者なあに、飮まなけア飮まないでも濟むんですけども、氣がうつした時なんか一ツ猪口ちよこいただくてえと、馬鹿にい氣持になツて了ふもんですから、つい戴く氣になツて了ふのですの。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
渠は義雄の猪口ちよこにも酒をついだ。
泡鳴五部作:03 放浪 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
猪口ちよこで渡せ
青い眼の人形 (新字新仮名) / 野口雨情(著)
水でも呑みに來たのかと思つたら、昨夜の騷ぎの後で、奧から下げて置いた徳利と猪口ちよこが、ちやんと洗つて流しの向うに伏せてあつただ。
へえゝこれがお猪口ちよこ……ウンナ……手には持慣もちつけてますが、うま出来できてるもんですな、ヘヽヽ、これはお徳利とくり成程なるほどなかからおさけが出るんで、面白おもしろいもんですな。
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
一度片付けた晩酌の膳を出して、猪口ちよこを二つ、かんざましになつた徳利の尻を、まだ熱くなつてゐる銅壺どうこに突つ込みます。
なんだよ、猪口ちよこの中へ指をんでサ、もういてるから、おさけこぼれる気遣きづかひはないは。
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
二本目の徳利から、一口呑みかけた猪口ちよこを下に置いて、萬兵衞はお常の膝を引き寄せて横になりました。
「いや、千本殿は見かけに寄らぬ大酒だが、私は身體に似氣なく生得しやうとく下戸げこで、ほんの猪口ちよこで二三杯といふところだ、——尤も眠氣を拂ふために、夜つぴて濃い茶を呑んで居た」
お粂は猪口ちよこを二つ、徳利を二本、八五郎の眼の前へ並べて、先づ一つを差すのです。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
平次の持出した猪口ちよこ、ガラツ八はいなみもならず、冷で注いでキユーツとやります。
それは三月十日の夜のこと、晩酌ばんしやくの後を曳いて、思はず過した勘兵衞は、お關を側に引付けたまゝ、口を割るやうにして二た猪口ちよこ三猪口呑ませて、良い心持さうに何やら唸つて居りました。
欄干に猪口ちよこゑた一族郎黨は、番頭の孫作、手代の伴造、遠縁の清五郎、隣の小料理屋——柳屋の主人幸七、その女房で良い年増のお角、出入りの鳶頭とびがしら文次、それに若くて綺麗なところでは
和助どんは昨夜宵のうちは家に居なかつたから、下手人はてつきりお近さんに違ひないと思ひ込んで、それを助けるつもりで、今朝暗いうちに、そつと臺所へ行つて、徳利と猪口ちよこを洗つたのだらうよ。
「昨夜主人が飮んだ酒の殘りはないのか。徳利は、猪口ちよこは?」
「俺は三猪口ちよことは呑んぢや居ねえ」
「道具は? 猪口ちよことか、徳利とか」