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猜忌
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さいぎ
村落の
目は
勢ひ
嫉妬と
猜忌とそれから
新に
起つた
事件に
對するやうな
興味とを
以て
勘次の
上に
注がれねばならなかつた。
彼は
其処につッ立って自分の方を
凝と見て居る
其眼つきを見て自分は更に驚き
且つ怪しんだ。
敵を見る
怒の眼か、それにしては力薄し。人を疑う
猜忌の眼か、それにしては光鈍し。
そこで
猜忌の悪徳のためにほとんど傷心してしまった。
彼は
決して
他人と
爭鬪を
惹き
起した
例もなく、
寧ろ
極めて
平穩な
態度を
保つて
居る。
唯彼等のやうな
貧しい
生活の
者は
相互に
猜忌と
嫉妬との
目を
峙てゝ
居る。
其れでも
彼等が
心に
深く
互の
情を
刻むまで
猜忌の
目を
睜つて
居る
勘次を
欺きおほせることは
出來なかつた。