版元はんもと)” の例文
其後、新橋堂の都合で、私の承諾の下に「みみずのたはこと」は他の新橋堂版の私の小説「黒い眼と茶色の目」と共に「新春」の版元はんもと福永書店に譲られました。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
この前、同じ版元はんもとから『地球盗難』を刊行したが、これは意外に好評であった。この『地球盗難』はその後、三夜連続のラジオドラマとして放送され、更に好評を博した。
偐紫田舎源氏にせむらさきいなかげんじ』の版元はんもと通油町とおりあぶらちょう地本問屋じほんどんや鶴屋つるや主人あるじ喜右衛門きうえもんは先ほどから汐留しおどめ河岸通かしどおり行燈あんどうかけならべたある船宿ふなやどの二階に柳下亭種員りゅうかていたねかずと名乗った種彦たねひこ門下の若い戯作者げさくしゃと二人ぎり
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
先生がその学識文才をもって愚婦ぐふ愚夫ぐふ相手の戯作の筆を下ろしゃあ、それ、よく言うやつだが、一気に洛陽の紙価を高めというやつさ。版元はんもとは先生の名を神棚へ貼って朝夕拝みやしょうて。
仇討たれ戯作 (新字新仮名) / 林不忘(著)
二十二年の十月発行の廿にぢう七号を終刊しうかんとして、一方いつぱうにはみやこはなが有り、一方いつぱうには大和錦やまとにしきが有つて、いづれもすこぶ強敵きやうてき版元はんもと苦戦くせんのちたふれたのです、しかし、十一月にまた吉岡書籍店よしをかしよじやくてんもよふし
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
客は、襖があくとともに、なめらかな調子でこう言いながら、うやうやしく頭を下げた。これが、当時八犬伝に次いで世評の高い金瓶梅きんぺいばい版元はんもとを引き受けていた、和泉屋市兵衛いずみやいちべえという本屋である。
戯作三昧 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
五十日間の手錠てじょう、家主預けときまって、再び己が画室に坐った歌麿は、これまでとは別人のように弱気になって、見舞に来た版元はんもとの誰彼をつかまえては、同じように牢内の恐ろしさを聞かせていたが
歌麿懺悔:江戸名人伝 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
版元はんもとが検挙されたんで申込人の名が知れたんだね。好い面の皮さ。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
ここに本町一丁目の金港堂きんこうどう明治三十五年の頃突然文学婦人少年等の諸雑誌ならびに小説書類の出版を広告して世の耳目じもくを驚かせしことあり。金港堂といへば人に知られし教科書々類の版元はんもとなり。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)