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片枝
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かたえ
いや
放しませぬ
放されませぬお
前さま
殺しては
旦那さまへ
濟みませぬといふは
正しく
勘藏か、とお
高の
詞の
畢らぬ
内闇にきらめく
白刄の
電光アツと
一聲一刹那はかなく
枯れぬ
連理の
片枝は。
眼を病めば
起居をぐらし
冬合歓の日ざしあたれる
片枝のみ見ゆ
時しあれば変はらぬ色に
匂ひけり
片枝折れたる宿の桜も
むかし
思へば
忍が
岡の
名も
悲しき
上野の
背面谷中のさとに
形ばかりの
枝折門、
春は
立どまりて
御覽ぜよ、
片枝さし
出す
垣ごしの
紅梅の
色ゆかしと
延びあがれど、
見ゆるは
萱ぶきの
軒端ばかり
花ひとつ
片枝に
留むる
玉蘭の我が視野にして煙霞はてなし