父上ちちうえ)” の例文
若君わかぎみはもうお忘れでございましょうが、去年きょねん、お父上ちちうえ勝頼かつよりさまに僧侶そうりょをおしたいなされて菊亭家きくていけへおしあそばしたことを」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたくしは、このへやのなかにあるものを、けっしてあなたさまにお見せしないと、お父上ちちうえさまにお約束やくそくしたのでございます。
「でも、わたしは、おぼうさんはきらいです。お父上ちちうえは、どうして、わたしを、おぼうさんにしようとなさったのですか。」
さむらいの子は、ちゃんなどというもんじゃアねえ。父上ちちうえといえ……という左膳さぜんめいを奉じて、つけなくてもいいところへ、盛んに父上をつけるので。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
父上ちちうえも、どうかこちらへいらして、親子おやこいっしょにおらしくださいませんか。わたしどもも、まだ子供こどものないうちに孝行こうこうしたいとおもいます、というようなことがいてありました。
とうげの茶屋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
父上ちちうえとはしょではございませんか。』
「さて、いよいよ、あなたさまのおうけつぎになった財産ざいさんをごらんになるときがまいりました。お父上ちちうえさまのおしろをご案内あんないいたしましょう。」
父上ちちうえは、りっぱな学者がくしゃだった。そのをひいたおまえが、勉強べんきょうはだいきらいだなんていって、はずかしいとおもわぬか。
天目山てんもくざんにて、お父上ちちうえとともにおてあそばした太郎信勝たろうのぶかつさまよりお一つ下——本年ほんねんお十六さいにわたらせられる」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ウム! 宵の口まで、この穴のまわりをうろつき、父上ちゃん父上ちちうえ! と左膳を呼ばわっていたかの少年!」
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「お約束は、かならずおまもりいたします。そして、お父上ちちうえさまにたいするのとおなじように、あなたさまにも、いのちをなげだして、忠義ちゅうぎをはげみたいとぞんじます。」
そこへすわれ、お父上ちちうえにかわって、おまえのしょうね(こころね)をたたきなおしてやるから。
はるばる、若君わかぎみがここへ、お越しあそばしたのは、お父上ちちうえ勝頼公かつよりこうをお迎えにまいったのだ。その鎖駕籠くさりかごのうちに、お身をひそめたもうおんかたこそ、まぎれもなき勝頼公かつよりこうと見た。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ちゃん?……父上ちちうえ! 父上!」
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)