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煙波
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えんぱ
眼界の
達する
限り
煙波渺茫たる
印度洋中に、
二人の
運命を
托する
此小端艇には、
帆も
無く、
櫂も
無く、たゞ
浪のまに/\
漂つて
居るばかりである。
どんより
曇つて
折り/\
小雨さへ
降る
天氣ではあるが、
風が
全く
無いので、
相摸灣の波
靜に
太平洋の
煙波夢のやうである。
噴煙こそ
見えないが
大島の
影も
朦朧と
浮かんで
居る。
進み
進んで
遂に
印度洋の
海口ともいふ
可きアデン
灣に
達し、
遙かにソコトラ
島を
煙波縹茫たる
沖に
望むまで、
大約二
週間の
航路は
毎日毎日天氣晴朗で、
海波平穩で