煉瓦造れんがづくり)” の例文
怖しい処で見た、赤い色と灰色の混った処で見た……何処だろう? 考えると、私の目の前に、河水かわみずに臨んだ赤い煉瓦造れんがづくりの監獄の建物が浮んだ。
不思議な鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
明眸めいぼうの左右に樹立こだちが分れて、一条ひとすじ大道だいどう、炎天のもとひらけつゝ、日盛ひざかりの町の大路おおじが望まれて、煉瓦造れんがづくりの避雷針、古い白壁しらかべ、寺の塔などまつげこそぐる中に、行交ゆきかふ人は点々と蝙蝠こうもりの如く
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
宗助は日のまだ高くならない七時頃に、昇降器エレヴェーター煉瓦造れんがづくりの三階へ案内されて、そこの応接間に、もう七八人も自分と同じように、同じ人を待っている光景を見て驚ろいた事もあった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
氷川なる邸内には、唐破風造からはふづくりの昔をうつせるたちと相並びて、帰朝後起せし三層の煉瓦造れんがづくりあやしきまで目慣れぬ式なるは、この殿の数寄すきにて、独逸に名ある古城の面影おもかげしのびてここにかたどれるなりとぞ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
明眸めいぼうの左右に樹立こだちが分れて、一条ひとすじの大道、炎天のもとひらけつつ、日盛ひざかりの町の大路が望まれて、煉瓦造れんがづくりの避雷針、古い白壁しらかべ、寺の塔などまつげこそぐる中に、行交う人は点々と蝙蝠こうもりのごとく
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
椰子やし檳榔子びんろうじの生え茂つた山に添つて、城のやうに築上つきあげた、煉瓦造れんがづくりがづらりと並んで、矢間やざまを切つた黒い窓から、いしびやの口がづん、と出て、幾つも幾つも仰向あおむけに、星をまうとして居るのよ……
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
言う時、煉瓦造れんがづくりの高い寄宿舎の二階から一文字に懸けてあるくろがねといが鳴って、深い溝を一団の湯気が白々とうずまあがった。硝子窓がらすまど朦朧もうろうとして、夕暮の寒さが身に染みるほど室の煖まるのが感じらるる。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)