-
トップ
>
-
湯玉
>
-
ゆだま
唯見ると、
親父は
湯玉を
拂つて、
朱塗に
成つて
飛出した、が
握太な
蒼筋を
出して、
脛を
突張つて、
髯旦の
傍に
突立つた。
なぜ
己れを
殺さぬ、
殺さぬか、
己れも三五
郎だ
唯死ぬものか、
幽靈になつても
取殺すぞ、
覺えて
居ろ
長吉めと
湯玉のやうな
涙をはら/\、はては
大聲にわつと
泣き
出す
ぼろぼろと
湯玉のような涙が走る。お綱は拭こうともしないで
やがてあわだつ
湯玉の表面に、ギラギラと油が浮いてきた。
殺氣朦々として
天を
蔽へば、
湯船は
瞬く
間に、
湯玉を
飛ばして、
揚場まで
響渡る。