湯浴ゆあ)” の例文
やがてまきの煙が、勝手から家の内を吹きながれた。湯浴ゆあみして、帷子かたびらにかえた藤吉郎は、草履をはいて、庭木戸から外へ歩みかけた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たらひのなかに湯浴ゆあみする
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
幕の外へ、声をかけると、湯浴ゆあみの間も、槍をならべて、外を守っている武者のひとりが、答えて、顔だけ中へ見せた。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
高時は、起きて、大欠伸あくびを一ツした。すぐ湯殿へ入る。お湯浴ゆあみ、お召換え、つづいて、浜座敷での御一献ごいっこんと、女房たちが、もう配膳にかかり出す。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『その御勅使が見えましては間に合いかねる儀にござります。畏れながら、ちと、お湯浴ゆあみをお急ぎあそばして』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
湯浴ゆあみ、食事なども、終ってから、王進は、荘主あるじ太公たいこうに会った。頭巾ずきんをかぶり、白髯はくぜんは膝にたれ、道服に似たものを着、柔かそうな革靴かわぐつをはいている。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「もう、湯浴ゆあみをして、化粧しているかな。親たちと、膳をかこんで、御飯でもたべている折かな?」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
石井山の本陣にあっても、なかなか十日に一ぺんの湯浴ゆあみもできず、皮膚は五年越しの戦場けにくすぶり、赤っぽいひげはとかくもじゃもじゃたまりがちであった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
湯浴ゆあみを終えて、すすめる酒を程よくすまし、膳を下げて貰った後、三五兵衛は炬燵こたつに手を入れて
八寒道中 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
湯浴ゆあみか。……そうだの。こういうときは、一風呂浴びたらさだめしさわやかになるかもしれんな」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
湯浴ゆあみをして、髪もきれいにたばねてさしあげるように——と、殿からのお気づけでございます」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
途中万一を思って、娘を送らせた金吾は直ちに戻ることと思っていたが、かれがそこに落着いて、湯浴ゆあみをすまし、服をかえ、ここのどきの時計を聞く頃になっても帰邸しない。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
内匠頭は、湯浴ゆあみをして、式服を着けた。刃金はがねよろう気持であった。自分の心が危ういのだ。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いかにも、庭先へたらいを出して、湯浴ゆあみを終えたところらしいが、それが何と致したのじゃ」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いちどの湯浴ゆあみも水拭きもしたことなく、皮膚はあかとこの冬中の寒気で松かさみたいになっている。やや暖かになって来たと思うと、体じゅう得体えたいの知れない腫物できものができてきた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
馬子や漁師や往来の者の湯浴ゆあみにまかせる野天風呂があって、今も、紫雲英げんげのさいている原ッぱへ、笠やわらじをぬぎすてた旅の人が、草の葉の浮いている青天井の温泉につかッて
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ここにいては、まったく、世上の事は何も分りません。こよいは悠々ゆるゆる、都の近状など、伺わせてください。……ま、湯浴ゆあみなどなされて、何の馳走もありませんが、おくつろぎの上で」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あいにくとここにも誰か湯浴ゆあみをしているやつがある——と舌打ちをしてフト向うへ眸をこらすと、湯気にまぎらわしい鼠色の衣を着た一人の虚無僧、掛絡けらくを外し、丸ぐけの帯を解き
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今朝は起き出るとすぐ髪を結い、またやまいのため滅多にしない湯浴ゆあみをもして
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「この子は、風呂好きじゃ、湯浴ゆあみのしたくはさせてあろうの」
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『お湯浴ゆあみは。お食事は』——と。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ともあれ、お湯浴ゆあみでも」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おう、お湯浴ゆあみで……」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)