温厚おんこう)” の例文
温厚おんこうなゴルドン、常識にとんだゴルドン、しかも少年たちにはきびしく毎日の学課がっかを責めて、すこしもかしゃくしないゴルドン。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
当主の、福子の良人には父にあたるその人は、温厚おんこう一途いちずで、仕事の上のことでは、まだまだ隠居のの下にいた。
万年青 (新字新仮名) / 矢田津世子(著)
こう云う言葉を聞いている内に、まだ酒気が消えていない、堀尾一等卒の眼の中には、この温厚おんこうな戦友に対する、侮蔑ぶべつの光が加わって来た。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
解剖の教師は恐ろしい顔でもしているかと思って見ると、温厚おんこう君子然くんしぜんとした人であった。矢野は気味悪く一番あとになって室へはいった。
廃める (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
頭はたたきられ、うではへし折られて、これがあの温厚おんこうな人の姿であるか、といきどおりを感じさせるほどに、ひどいものだった。
土肥君は余の同郷、小学校の同窓どうそうである。色の浅黒い、あごの四角な、ねずみの様な可愛いゝ黒い眼をした温厚おんこうな子供であった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
生活の味いは、それだけ私を変化させた。「——新体詩人です」といって、私を釧路の新聞に伴れていった温厚おんこうな老政治家が、ある人に私を紹介した。
弓町より (新字新仮名) / 石川啄木(著)
瓦廻かはらまわしをる、鞦韆飛ぶらんことびる、石ぶつけでも、相撲すまふでも撃剣げきけん真似まねでも、悪作劇わるいたずらなんでもすきでした、(もつと唯今たゞいまでもあまきらひのはうではない)しかるに山田やまだごく温厚おんこう
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
あの、温厚おんこうにして深略しんりゃくのある小幡民部こばたみんぶ、あのやさしくて凛々りりしい咲耶子さくやこ、あの絶倫ぜつりん槍術家そうじゅつかと弓の名人である、蔦之助つたのすけ巽小文治たつみこぶんじにもずいぶんながく会わなかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
日本から招聘しょうへいせられた工学者で、この島へきてからもはや、二十年の月日はすぎた、かれは温厚おんこうのひとでかつ義侠心ぎきょうしんが強いところから、日本を代表する名誉めいよ紳士しんしとして、一般の尊敬そんけいをうけている。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
と、へいそ温厚おんこうな英国少年ゴルドンがいった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)