深入ふかいり)” の例文
恰ど智慧ちゑの足りない將軍が勝に乗じて敵を長追ながおひするようなものでつい深入ふかいりする。そして思も掛けぬ酷目みじめな目に逢はされる事もあツた。
水郷 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
五百が屋敷からさがる二年前に、栄次郎は深入ふかいりをして、とうとう司の身受みうけをするということになったことがある。忠兵衛はこれを聞き知って、勘当しようとした。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
最後にエマーソンやホーソーンの名がた。代助は、高木にう云ふ種類の知識があるといふ事を確めたけれども、たゞ確めた丈で、それより以上に深入ふかいりもしなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
となぜか弱いを吹いた……差向いをずりさがって、割膝でかしこまった半纏着の欣八刑事、風受かざうけのいきおいに乗じて、土蜘蛛つちぐもの穴へ深入ふかいりに及んだ列卒せこの形で、肩ばかりそびやかして弱身を見せじと
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼等かれら漸次しば/\家族かぞくあひだこと夫婦ふうふあらそひに深入ふかいりしてかへつ雙方さうはうからうらまれるやうなそん立場たちばはまつた經驗けいけんがあるので、こはれた茶碗ちやわんをそつとあはせるだけの手數てすうたくみ方法はうはふ機會きくわいとをつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
健三の態度から深入ふかいりの危険を知った島田は、すぐ問題を区切って小さくした。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)