浦島太郎うらしまたろう)” の例文
「さあ、みんなにげていけ。もうけっしてどもたちにつかまるなよ。」と、浦島太郎うらしまたろうがかめをにがしたときのように、いいました。
きれいなきれいな町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
この楽園の生活を、どうして彼女が好まないことがあろう。彼女は丁度昔話の浦島太郎うらしまたろうの様に、時を忘れ、家を忘れてこの国の美しさに陶酔しているのだ。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
保吉はこう云う色彩の調和に芸術家らしい満足を感じた。殊に乙姫おとひめ浦島太郎うらしまたろうの顔へ薄赤い色を加えたのはすこぶ生動せいどうおもむきでも伝えたもののように信じていた。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
人間にんげん世界せかいには、浦島太郎うらしまたろうというひと竜宮りゅうぐうって乙姫おとひめさまのお婿様むこさまになったという名高なだかいお伽噺とぎばなしがございますが、あれは実際じっさいあった事柄ことがらなのでございましょうか……。
子供たちは、もう浦島太郎うらしまたろうの時代をとっくに過ぎていたので、話といっても、そう種はなかった。それに本も手近かにはないので、すぐ話の種につまって、大いに弱らせられていた。
浦島太郎うらしまたろうは、かめをたすけたために龍宮りゅうぐうへいって、おとひめさまにであったのだから、ぼくもこれから殺生せっしょうをしないことにしようと、次郎じろうさんはおもいました。
きれいなきれいな町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
つまり天津日継あまつひつぎ皇子みこ彦火々出見命様ひこほほでみのみことさまが、姉君あねぎみ御婿君おんむこぎみにならせられた事実じじつ現世げんせ人達ひとたちれきいて、あんな不思議ふしぎ浦島太郎うらしまたろうのお伽噺とぎばなしつくあげげたのでございましょう。
大森の海から帰った後、母はどこかへ行った帰りに「日本昔噺にほんむかしばなし」の中にある「浦島太郎うらしまたろう」を買って来てくれた。こう云うお伽噺とぎばなしを読んでもらうことの楽しみだったのは勿論である。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
大げさに申しますれば、浦島太郎うらしまたろう乙姫様おとひめさま御寵愛ごちょうあいを受けたという龍宮りゅうぐう世界、あれでございますわ、今から考えますと、その時分の私は、本当に浦島太郎の様に幸福だったのでございますわ。
人でなしの恋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「うそのことは、ほんいてあるわけはないよ。これは浦島太郎うらしまたろう絵本えほんだよ。これと、とんぼととりかえっこをしようよ。」と、次郎じろうさんがたのみました。
きれいなきれいな町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
真先まっさきにわたくしがおたずねしたのは浦島太郎うらしまたろう昔噺むかしばなしのことでございました。——