浄土じょうど)” の例文
旧字:淨土
天才たり得ない民衆がそのままに美の浄土じょうどに摂取される道がないであろうか。否々、凡夫ぼんぷたるが故に、必定救われるその誓いがあり得ないであろうか。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
味わったことがないむしろ反対にこの世が極楽浄土じょうどにでもなったように思われお師匠様とただ二人生きながらはすうてなの上に住んでいるような心地がした
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
これは専念に当来とうらい浄土じょうど渇仰かつぎょうすべき僧侶そうりょの身で、鼻の心配をするのが悪いと思ったからばかりではない。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
文句の面白おもしろさもあって、踊るひと、るひと共に、大笑い、天地も、ために笑った、と言いたいのですが、これは白光浄土じょうどとも呼びたいくらい、荘厳そうごんな月夜でした。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
西方の弥陀みだ浄土じょうどに押しせばめられて、弥勒みろくの天国はだんだんと高く遠のき、そのまぼろしはいよいよかすかになって、そこに往生おうじょうを期する者も今は至ってまれであるが
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「そんなもの見なければいいに。……だが、眼をふさぎ道をよけても、今の世の中では、到るところに、死人が転がっているのだから困るな。この村だけは、浄土じょうどだと思っていたが」
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いかなる凡夫も浄土じょうどへの旅人たることができる。この真理をこの一枚の敷瓦が私に示してくれる。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
隠れ里本来は昔話のねずみ浄土じょうどなどのように、富貴具足ふうきぐそく仙界せんかいであって、いのれば家具を貸し金銭を授与したなどと、説くのが昔の世の通例であったのを、人の信仰が変化したから
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
僧侶だけでも、五岳の碩学せきがく、洛中洛外の禅律ぜんりつ、八宗の沙門しゃもん、余す者なく集会して、九品くほん浄土じょうど五百阿羅漢ごひゃくあらかん、三千の仏弟子、目前にあるがごとし——と当時の目撃者はその状況をしるしている。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぜんか、法華ほっけか、それともまた浄土じょうどか、なににもせよ釈迦しゃかの教である。ある仏蘭西フランスのジェスウイットによれば、天性奸智かんちに富んだ釈迦は、支那シナ各地を遊歴しながら、阿弥陀あみだと称する仏の道を説いた。
おぎん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
人間は誰でも、こうして、万華まんげ浄土じょうどに生を楽しんでいられるものを、好んで泣き、好んで悩み、愛慾と修羅しゅら坩堝るつぼへ、われからちて行って、八寒十熱の炎に身をかなければ気がすまない。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
心は浄土じょうどに誘われながら、身は現世げんぜに繋がれている。私たちはこの宿命をどう考えたらよいか。異なる三個の道が目前に開けてくる。現世を断ち切って浄土に行くか、浄土を見棄てて現世に走るか。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
この世の浄土じょうどにしなければならないと考えていたのである。
鍋島甲斐守 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
浄土じょうどはあり、浄土はやすし
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
浄土じょうど小鳥ことり
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)