流連いつづけ)” の例文
迎えに行った男は二階へ上ると、持って行った金を捲き揚げられて、一緒に飲み潰れた。そしてまた幾日も二人で流連いつづけしていた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
流連いつづけの客もかえって雨のためにある位であるけれども、さすがに何処となく物淋し気で一種の哀れがあるとでもいうのであろう。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
昼の九つ(十二時)過ぎで、栄之丞は夏の日を編笠によけながら出て行くと、八橋の座敷には次郎左衛門が流連いつづけをしていた。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「おやじのシャッポ(ポコペンとか駄目とかいう意味)がホームラン(流連いつづけのこと)」だの、「彼女のラジオ(色眼)がミシン(意味深長)」
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
一番遅く、夜明け近くに、江戸の本職小猿七之助が、これは贅沢ぜいたくに、数日前から流連いつづけしていた二見の茶屋から、駕を打たせて、乗りこんできた。
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こうしてどこというあてもなく、ぶらりぶらりと二廻りしてしまったのが丁度四ツ半下り、——流連いつづけ客以外にはもう登楼もままならぬ深夜に近い時刻です。
ははははは。私なんざア流連いつづけをする玉でないんだから、もうじきにおいとまとするんだが、花魁今朝だけは器用に快よく受けて下さいな。これがお別れなんだ。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
大抵、流連いつづけというものは二三日もすると飽き飽きする。いくら惚れたおんなとでも、妓と茶屋とは又別である。
傾城買虎之巻 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
吉原に流連いつづけしていても、朝の寒稽古にはおくれたためしがない。遊女屋の温かい蒲団ふとんから、道場の凍った板の間へ、未練会釈もなく身を投げ出す融通自在を自慢がおで話す。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
父はお茶屋に流連いつづけでまだ戻ってこないし、兄は商用で朝早く外出していた。彼女は川根の姿を見つけだしたので、そッとイナリの前へ案内した。そして、中の物をとりだして見せた。
これは友人のはなしだ、ある年の春の末、もう青葉の頃だったが、その男は一夜あるよ友人に誘われて吉原よしわらのさる青楼せいろうあがった、前夜は流連いつづけをして、その日も朝から酒を飲んでいたが、如何いかにも面白くない
一つ枕 (新字新仮名) / 柳川春葉(著)
意気な小家こいえ流連いつづけの朝の手水ちょうずにも、砂利を含んで、じりりとする。
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
元日から七草まで流連いつづけをして、八日のひる頃に初めて馬喰町の宿へ帰ると、治六は帳場の前に坐って亭主と話していた。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
流連いつづけ大バカ、朝がえり小バカ、いきは昼間のないしょ遊びと番付はできていても、なにしろまだ五つといえば午前の八時なんだから、そんな時刻に大手をふりふり
馬関で、桂がくれた金も、春日丸で五卿から頂戴ちょうだいした何百ぴきかのご下賜金も、このあわれっぽい丹波女に、みついでやろうと露八は思った。二日も、三日も、流連いつづけしていた。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
善吉は次の日も流連いつづけをした。その次の日もかえらず、四日目の朝ようやくかえッた。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
男が手数料を出したとすれば、高価たかい、まずいオイランを買って流連いつづけした気で思い切る事になる。女が出したのならば……安い情夫に入れ上げた位の気持ちであきらめるのでもあろうか。
三保みほの松原とか、久能山くのうさんだとか……あれ何ていうの樗牛ちょぎゅうという人のお墓のあるところ……龍華寺りゅうげじ? 方々見せてもらって、静岡に滞在していたの。そして土地のも呼んで、浮月に流連いつづけしていたの。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
松前行きの便船がでるまで待て、というので、一行は一ヶ月ほど塩竈の遊女屋に流連いつづけして便船を待った。もうヤケだった。召し捕るなり、殺すなり、勝手にしろ。刀をふりまわして死んでやるから。
と、上方かみがたの人らしいが二三日流連いつづけをしていて
傾城買虎之巻 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
けさも流連いつづけかとひやひやしていると、次郎左衛門は思い切りよく朝の霜を踏んで帰った。途中はなんにも言わなかったが、馬喰町へ帰ると彼は怖い顔をして治六に宣告した。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
流連いつづけの酒のあいだに、この仲間が、ふと、将門のむかし話をしているのを聞き
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すなわち小生は自分の成功に気が緩むと共に、又も、生れ付きの飲酒癖に囚われるようになりまして、明け暮れロ市内の酒場に流連いつづけし、家事はことごとく妻に一任して顧みないようになりました。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
おひろの家で流連いつづけしたりして、実家さとの母をいらいらさせた。
挿話 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「もう流連いつづけも飽いたな」
傾城買虎之巻 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
きょうも、だだら遊びの流連いつづけが、西陽の頃までつづいていた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)