水門すいもん)” の例文
そこで、むすめはひざまずいて、神さまのみをよび、おいのりをしました。すると、とつぜん、天使てんしがあらわれて、おほり水門すいもんをとじてくれました。
屋根船はその間にいつか両国のにぎわいぎ過ぎて川面かわもせのやや薄暗い御蔵おくら水門すいもんそと差掛さしかかっていたのである。燈火の光に代って蒼々あおあおとした夏の夜の空には半輪はんりんの月。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「ゆうべ水門すいもんけておかなかったから、まだこの水の手にはどくがよどんでいるんだ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人夫にんぷたちが運河のつつみをなおしたり、大きな水門すいもんにタールをったりしていました。
横網河岸よこあみがし備前家びぜんさま(今の安田公園の処)のおめかけお花さんが、毎日水門すいもんから屋根船を出して、今戸河岸いまどがし市川権十郎かわさきやの家へいったのでお家騒動が起り、大崎の下邸しもやしきへ移転するといううわさから
水戸藩邸みとはんていの最後の面影おもかげとどめた砲兵工廠ほうへいこうしょうの大きな赤い裏門は何処へやら取除とりのけられ、古びた練塀ねりべいは赤煉瓦に改築されて、お家騒動の絵本に見る通りであったあの水門すいもんはもう影も形もない。
伝通院 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
だれですか、雪のように白い着物きものをきた人が天からおりてまいりまして、その人が水門すいもんをとじて、水をとめてしまいましたので、幽霊ゆうれいはおほりをとおってくることができたのでございます。
土曜といわず日曜といわず学校の帰り掛けに書物の包を抱えたまま舟へ飛乗ってしまうのでわれわれは蔵前くらまえ水門すいもん、本所の百本杭ひゃっぽんぐい代地だいちの料理屋の桟橋さんばし橋場はしばの別荘の石垣、あるいはまた小松島こまつしま
夏の町 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
水門すいもん忍返しのびがえしから老木おいきの松が水の上に枝をのばした庭構え、燈影ほかげしずかな料理屋の二階から芸者げいしゃの歌ううたが聞える。月が出る。倉庫の屋根のかげになって、片側は真暗まっくら河岸縁かしぶち新内しんないのながしが通る。
深川の唄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)