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毫
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つゆ
彼はその妻の常に
楽まざる
故を
毫も
暁らず、始より唯その色を見て、
打沈みたる
生得と
独合点して多く問はざるなりけり。
毫知ざれども其後更に二人の娘より一度の
便りも無ければ
案事煩ひ或日長庵に向ひて申樣何卒姉娘のお文にも一度
逢して下されと頼みければ
流石の長庵も
當惑爲し
挨拶に
困じ
果口から
出放題の事を
なかなか消えもやらで身に添ふ幻を形見にして、又
何日は必ずと
念懸けつつ、雨にも風にも君が無事を祈りて、心は
毫も昔に
渝らねど、君が恨を重ぬる宮はここに在り。
詠め居る
體にもてなし肥前が目に
留りて心中に
怪しと思はせん者と
※るとは
毫知らざれば肥前は
亭主の彌次六に向ひ
只今庭へ出給ふ御方は
如何なる客人にや
當人とは思はれずと云に彌次六は
仕濟たりと聲を
又一方には
貸倒の損耗あるを思へば、
所詮仆し、仆さるるは
商の習と、お峯は
自ら
意を強うして、この
老女の
狂を発せしを、夫の
為せる
業とは
毫も思ひ
寄るにあらざりき。