くせ)” の例文
雖然けれどもつぼね立停たちどまると、刀とともに奥の方へ突返つっかえらうとしたから、其処そこで、うちぎそでを掛けて、くせものの手を取つた。それが刀を持たぬ方の手なのである。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
馬の百くせを直すよう云々、左の頸筋に指にて水という字を書き、手綱をよく握りてすなわち不動の縛の縄かんじて馬の額に取鞆(?)で卍字を書く、同じ鞭先を持ち
といても癖直しをせぬ中は此通りのくせが有ますもとからすえまで規則正しくクネッて居る所を御覧なさい夫に又支那人の外には男で入毛する者は決して有りません支那人は入毛を
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
やむをえず、好い加減に領承りょうしょうした。そこで羽衣はごろもくせを謡い出した。春霞はるがすみたなびきにけりと半行ほど来るうちに、どうも出が好くなかったと後悔し始めた。はなはだ無勢力である。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
肩下のあたりに、蓮華の花びらが透しになって、その中に、あるかなしかというように「王」という字が見える。底を見ると、話に聞いたとおり高い揚底あげぞこで、底にくせの凹みがある。まさしくこれだ。
呂宋の壺 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
其時そのとき、おつぼねが、階下へ導いてざまに、両手でしっかと、くせもののかたな持つ方の手をおさへたのである。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
くせものは、仁王立におうだちに成つて、じろ/\と瞰下みおろした。しかし足許あしもとはふら/\して居る。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)