擒人とりこ)” の例文
「しかしまたことによると、このたち擒人とりことなっている咲耶子を助けだそうという考えで、この甲府こうふ潜伏せんぷくしているようにも考える」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つまりこの風車の別荘は、そういう商取引において、よい都合を与える上級船員たちを擒人とりこにしておく、商法の捕虜収容所だった。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
咲耶子さくやこをうばい返しに? ウム、しゃらくさいやつめら! 浜松城はままつじょう護送ごそうするまでは大事な擒人とりこ、かならずぬかりがあってはならぬぞ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
むなしく、その方どもが、蜂須賀村へ帰るのは、一分いちぶんが立たぬというなら、不肖ふしょう十兵衛の身を、擒人とりことして、連れて行くもよい。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
次第に山間に誘いこんで、予定の危地を作るや、どっと八面からおおい包んで、遂に、祝融夫人を擒人とりことすることに成功した。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、劉予州。御身の真実はよく分った。けれど、われわれは足下の擒人とりこである。どうして都の丞相へ、そのことばをお取次ぎできようか」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
六歳で、国を離れ、織田家の擒人とりことなって、八歳再び駿河の質子となり、ようやく十五歳になって、今川義元からも人あつかいをうけ、彼が
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
擒人とりこども六十余名の太刀物の具をはぎ取って赤裸になし、顔に墨を塗って陣前よりはやしては追い、囃しては返すべし——と。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
藤吉郎は、逃げるように座敷へ駈けこむ。暁までも聟を擒人とりこにして帰すなと、悪戯いたずら好みの友たちは円坐を作って、酒々と性急せっかちに呼び立てたりする。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ははは。何をいうぞ孟獲。その汝は、すでに擒人とりことなって、わが面前に、指も動かせぬ身となっているではないか」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夫人は、自分が擒人とりことした張嶷、馬忠のふたりを首にして、さらに士気を鼓舞しようと云ったが、良人の孟獲は
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あれは、去年こぞの十月中旬なかばでした。浪華なにわの御合戦の際、暗夜とはいえ、不覚にも、私は楠木勢のために、擒人とりことなりました。けれど、恥とは一時の思いでした。
日本名婦伝:大楠公夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今では、よくぞ擒人とりこになって、真の人の道と、武士の道を、踏み迷わずにすんだと、天恩に謝しておりまする
日本名婦伝:大楠公夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「その心棒になる親分が、眼色のちがった小娘の擒人とりこになってしまったんだから、いくさにすりゃ散々な敗北だな」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「弁之助。また、あの擒人とりこの新介が、経文みたいな書を読んでるよ。石を投げこんでやれ、やかましいから」
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかもその二路ふたみちとも嶮隘けんあいで奇計を伏せて打つには絶好なところですから、もしお許しを得るならばそれがしと全琮ぜんそうとで協力して、曹休を擒人とりこにしてお目にかけます。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
曹軍百万の南征で、第一に擒人とりことなるものは、おそらくあなたのご主君備公であったろうと思う。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おまえは、又十郎を擒人とりこにしたが、同時に、又十郎を情人いろにもしたので殺しかねたのであろう。
柳生月影抄 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そうか。やはりそうか。実申せば、あのふみは、そなたの心をうごかすため、わざと置き忘れて行ったのだ。はははは、そなたはわしの兵法で、まんまと擒人とりこになったんだよ」
日本名婦伝:太閤夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あの伊吹山の一軒家にかくまわれたことは、一時は、人の情けの温かさに甘え、生命いのちびろいをした幸運に似ていたが、実はやはり敵の手に擒人とりことなってしまったも同じであった。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
命知らずの強者輩つわものばらも、さすがは正成公の御嫡子ごちゃくしよと、泣かぬ擒人とりことてはなかったのです。
日本名婦伝:大楠公夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もし姜維の微心びしんあわれみ、この衷情を信じ賜るならば、別紙の計を用いて、蜀軍を討ちたまえ。自分は身をひるがえして、諸葛亮しょかつりょう擒人とりことなし、これを貴陣へ献じておみせする。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平家方の打首や擒人とりこの処分、その他の軍務を果たすためで、心は、一日もはやく再び西下して、今のうちに、平家の全勢力を掃滅そうめつしておかなければ後日の大患と考えていたのである。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いけませんよ。擒人とりこのいる囲いへなんか……おまけに、男の所へ、女のくせに」
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「もはやのがれるすべもござりますまい。あなた様は越前三十七門の御惣領ごそうりょう、たとえ降伏して擒人とりことなられても、信長が、お命を助けおくわけはありません。さる生き恥をさらさんよりは……」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なるほど、関羽さえ擒人とりこにすれば、不落の城も、不落ではないからな」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「夜を待って、こよい劉延の陣へ攻め入り給え。それがし内より内応して、かならず劉延を擒人とりことしてみせます。劉延が捕われれば、その父なる太守劉度りゅうども、ご陣門に降ってくるにきまっておる」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二夫人が、玄徳を慕って、すでに敵の擒人とりことなっている境遇も思わず、今にでもすぐ会えるように思っているのは男と男との戦いの世界などにはうとい深苑しんえんの女性として、無理もないことであった。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「待ってくれ。わしは擒人とりこだぞ。なんでこんな待遇を君はとるのか」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なんの、擒人とりこを出したのはお互いだ。恥じることはない」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただ一人、擒人とりこにでもなっているようにである。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なぜ擒人とりこの兵にそんな馳走するのか」
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おい、おい、擒人とりこの新介。待て」
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「また一人、擒人とりこがふえた」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)