摂理せつり)” の例文
旧字:攝理
そうして彼らが熟知している唯一のことは、如何に彼らの作が廉価れんかであるかということのみであろう。だが摂理せつりはいつも不思議である。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
私の奉ずる神学はただ二言にしてつくす。ただ一なるまことの神はいましたまう、それから神の摂理せつりははかるべからずとうである。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
人生を支配している「摂理せつり」の大きなてのひらの無限のあたたかさに、深い感謝の念をさえささげているのである。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
偶然であったか、あるいは不可思議なる天の摂理せつりであったか、明智の病気が、この物語りに意外な、しかもまた考え様によっては、はなは妥当だとうな結末を与えた。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
人間生活がすべて神の摂理せつりで宿命的に決定されていると説く者に対する痛烈な皮肉であるが、これはそのまま唯物史観その他の一元的決定論に対しても妥当する。
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
神の摂理せつりを認め己を神の僕と信ずる上は、苦難災禍我を襲い来るとも「御心みこころをして成らしめ給え」といいて静に忍耐すべきである。これ僕たる者のるべき唯一の道である。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
これこそ神の摂理せつりであったなど、尤もらしくこじつけているものもあるが、ほんの一分ほどのやりとりのなかに、たしかにそうもいえる微妙な意志の疎通といったようなものが感じられる。
青髯二百八十三人の妻 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
渋紙した顔に黒痘痕くろあばたちりを飛ばしたようで、とんがった目の光、髪はげ、眉薄く、頬骨の張った、その顔容かおかたちを見ないでも、夜露ばかり雨のないのに、その高足駄の音で分る、本田摂理せつりと申す
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一抹いちまつのかすみの中にあるいは懸崖千仭けんがいせんじんの上にあるいは緑圃黄隴りょくほこうろうのほとりにあるいは勿来なこそせきにあるいは吉野の旧跡に、古来幾億万人、春の桜の花をでて大自然の摂理せつりに感謝したのである
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
自然の摂理せつりでしょうか。保元の乱、またすぐ三年後の、平治の大乱などは。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あめ摂理せつり黙示もくしとの
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
自然の摂理せつりというものは存外公平である。企みに企んだ悪事にも、つい思いもよらぬ抜け目があるものだ。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
摂理せつり」とかいう言葉を自分の心のよりどころにして、明るく人生をながめる態度を養って来たつもりであったが、それは単なる観念の遊戯ゆうぎにすぎなかったのか。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
次におのれ無知にして神の摂理せつりに暗き陰影を自ら投じたる不明を恥じ、これよりは全然神に服従せんとの意を表わし、以後神と彼との間に直接なる思想の伝達あらんことをねがい、最後に五節
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
神天地をつくりたもうたとのつくるというようなことばは要するにわれわれに対する一つの譬喩ひゆである、表現である。マットン博士のように誤った摂理せつり論を出さなくてもよろしい。畢竟は愛である。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
まず知るべきは「摂理せつり」のことである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)