ゆらめ)” の例文
旧字:
殊に歳暮さいぼの夜景の如き橋上けうじやうを往来する車のは沿岸の燈火とうくわと相乱れて徹宵てつせう水の上にゆらめき動く有様ありさま銀座街頭の燈火とうくわよりはるかに美麗である。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
電車の停留場には傘の影がいくつも重なり合って白くゆらめいている。雪を載せたトラックが幾台もつづいて通る。雨具をつけて自転車を走らせてゆくのもある。
雪の一日 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
現にその日も万八まんぱちの下を大川筋へ出て見ますと、大きく墨をなすったような両国橋の欄干らんかんが、仲秋のかすかな夕明りをゆらめかしている川波の空に、一反ひとそった一文字を黒々とひき渡して
開化の良人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
西にむかえばイントラ Intra の街の灯が水にゆらめく岬をまわると、サン・ジォヴァンニの小島の陰に、パランツァの灯火が望まれた、すぐ湖ぎしのホテル・ベルヴューに宿をとる。
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
戸の外のものの気勢けはい動揺どよめきを造るがごとく、ぐらぐらと家がゆらめいた。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
船は青い浪をゆらめきわけて進んでいた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
殊に歳暮さいぼの夜景の如き橋上きょうじょうを往来する車のは沿岸の燈火と相乱れて徹宵てっしょう水の上にゆらめき動く有様銀座街頭の燈火よりはるかに美麗である。
そとのものゝ気勢けはひ動揺どよめきつくるがごとく、ぐら/\といへゆらめいた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
入りつ出でつゆらめく男女の影は放蕩の花園にたはむれ舞ふ蝶に似て、折々流れきたる其等の人の笑ふ声語る声は、云難いひがた甘味かんみを含む誘惑の音楽に候はずや。
夜あるき (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ゆらめいた英臣の髯の色、口をいて、黒煙に似た。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)