挿頭かざし)” の例文
挿頭かざしの台はじん紫檀したんの最上品が用いられ、飾りの金属も持ち色をいろいろに使い分けてある上品な、そして派手はでなものであった。
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
五百は呼名は挿頭かざしと附けられた。後に抽斎に嫁することに極まって、比良野氏の娘分にせられた時、かざしの名を以て届けられたのは、これを襲用したのである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
お勢の生立おいたちの有様、生来しょうらい子煩悩こぼんのうの孫兵衛を父に持ち、他人には薄情でも我子には眼の無いお政を母に持ッた事ゆえ、幼少の折より挿頭かざしの花、きぬの裏の玉といつくしまれ
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
四四ふところのたまをうばはれ、挿頭かざしの花を四五嵐にさそはれしおもひ、泣くに涙なく、叫ぶに声なく、あまりに嘆かせたまふままに、火にき、土にはうむる事をもせで、四六かほに臉をもたせ
死出しで」の挿頭かざしと、いついつもあえかの花を編む「命」。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
伶人れいじんの着けた小忌衣おみごろも竹の模様と松の緑が混じり、挿頭かざしの造花は秋の草花といっしょになったように見えるが、「もとめこ」の曲が終わりに近づいた時に
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
兵部卿ひょうぶきょうの宮は春の花盛りのころに、去年の春の挿頭かざしの花の歌の贈答がお思い出されになるのであったが、その時のお供をした公達きんだちなどのかわを渡っておたずねした八の宮の風雅な山荘を
源氏物語:48 椎が本 (新字新仮名) / 紫式部(著)
挿頭かざしの台はじんの木の飾りあしの物で、蒔絵まきえの金の鳥が銀の枝にとまっていた。これは東宮の桐壺の方が受け持ったので、明石夫人の手から調製させたものであるからきわめて高雅であった。
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
もろかづら落ち葉を何に拾ひけん名はむつまじき挿頭かざしなれども
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
山桜にほふあたりに尋ね来て同じ挿頭かざしを折りてけるかな
源氏物語:48 椎が本 (新字新仮名) / 紫式部(著)
くやしくもつみをかしけるあふひ草神の許せる挿頭かざしならぬに
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
挿頭かざし折る花のたよりに山賤やまがつ垣根かきねを過ぎぬ春の旅人
源氏物語:48 椎が本 (新字新仮名) / 紫式部(著)