括弧かっこ)” の例文
括弧かっこの中でいうべき事かも知れないが、年齢としを取った今日こんにちでも、私にはよくこんな現象が起ってくる。それでよくひとから誤解される。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すると、カヴァの中央に、やや小さい円形の力が落ちることになるから、当然その圧し出された水が、上向き括弧かっこ())の形になるじゃないか。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
以下はその座談筆記の全文であって、ところどころの括弧かっこの中の文章は、私の蛇足だそくにも似た説明である事は前回のとおりだ。
花吹雪 (新字新仮名) / 太宰治(著)
細い目のちょいと下がった目尻めじりに、嘲笑ちょうしょう的な微笑を湛えて、幅広く広げた口を囲むように、左右の頬に大きい括弧かっこに似た、深い皺を寄せている。
かのように (新字新仮名) / 森鴎外(著)
僕はかなり逐語的にその報告を訳しておきましたから、しもに大略を掲げることにしましょう。ただし括弧かっこの中にあるのは僕自身の加えた註釈なのです。——
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「いき」は安価なる現実の提立ていりつを無視し、実生活に大胆なる括弧かっこを施し、超然として中和の空気を吸いながら、無目的なまた無関心な自律的遊戯をしている。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
括弧かっこのなかは帆汽船合計船舶総トン数にたいする帆船トン数の比率である。帆船は一八八四年まで年々殖えてゆき、同時にまた減ってゆきつつあったのである。
黒船前後 (新字新仮名) / 服部之総(著)
「時に小室君、僕は昨日商大の名簿を見て、君の旧姓を発見しましたよ。括弧かっこの中に書いてありました」
秀才養子鑑 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
括弧かっこの中は胸でのつぶやき言だった。ちゃんと母から教わった挨拶でもっと長く喋らなければならなかったのだが、これだけ言うのに三つも四つもペコペコとお辞儀ばかりしてごまかしてしまった。
地球儀 (新字新仮名) / 牧野信一(著)
とみという名は、お千代が十八の時生んだ私生児の名たみに似て、ただ一字ちがうだけである。また括弧かっこの中にしるされた十九という年齢を数えて見ると、大正二年の夏に生んだの年と同じである。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
その下に括弧かっこして後日の訳者を待つなどと附記していた。
デモクラシーの要素 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
それに括弧かっこして受持学科名が書いてあった。
次郎物語:04 第四部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
ヨット倶楽部の下に(ただし一そう)と括弧かっこで註がついているのは、新設だからまだ一艘しかないという意味なんだろう。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
以下はその日の、座談筆記の全文である。括弧かっこの中は、速記者たる私のひそかな感懐である。
黄村先生言行録 (新字新仮名) / 太宰治(著)
これまで例の口のはた括弧かっこ二重三重ふたえみえにして、妙な微笑を顔にたたえて、葉巻のけむりを吹きながら聞いていた綾小路は、煙草の灰を灰皿に叩き落して、身を起しながら、「駄目だ」と、簡単に一言云って
かのように (新字新仮名) / 森鴎外(著)
松浦友三郎の下に旧姓小早川と括弧かっこがしてあったので
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
小六は袂を探ってその書付を取り出して見せた。それに「このかき一重ひとえ黒鉄くろがねの」としたためた後に括弧かっこをして、(この餓鬼がきひたえ黒欠くろがけの)とつけ加えてあったので、宗助と御米はまた春らしい笑をらした。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
括弧かっこの中が、その先輩の評である。
(新字新仮名) / 太宰治(著)