“押(おっ)” の例文
「私(わし)なんざ臆病(おくびょう)でも、その位の事にゃ馴(な)れたでの、船へ乗った気で押(おっ)こらえるだ。どうしてどうして、まだ、お前……」
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其腫(は)れぼったい瞼(まぶた)はヒタと押(おっ)かぶさって、浅葱縞(あさぎじま)の単衣の脇(わき)がすう/\息つく毎に高くなり低くなりして居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎、徳冨蘆花(著)
米友が高札を川へ抛(ほう)り込んだために、町内からこの家の留守番を押(おっ)つけられたものです。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
私イ孩児の世話アして草臥(くたび)れたから、次の間に打倒(うちたお)れて寝てしまって、夜半(よなか)に眼イ覚(さま)すと、夫婦喧嘩がはだかって居るのサ、女の方で云うには、好(い)い塩梅(あんべい)に云いくるめて、旦那に押(おっ)かぶして置いたが
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
此(こ)の軽いものを戦(そよ)がすほどの風もない、夏の日盛(ひざかり)の物静けさ、其の癖、こんな時は譬(たと)ひ耳を押(おっ)つけて聞いても、金魚の鰭(ひれ)の、水を掻(か)く音さへせぬのである。
蠅を憎む記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
死ぬのは本望でござりましたろうが、もし、それや、これやで、釜ヶ淵へ押(おっ)ぱまったでござりますよ。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
喜十郎旦那が許(とこ)で、ふっくりと入れさっしゃる綿の初穂へ、その酒浸しの怪物(ばけもの)さ、押(おっ)ころばしては相成んねえ、柔々(やわやわ)積方も直さっしゃい、と利かぬ手の拳(こぶし)を握って、一力味(ひとりきみ)力みましけ。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
稲葉家の縁起棚の傍(わき)で見た事があるというだけ、その血相と、意気込みで、様子を悟って、爺さんは、やがて、押(おっ)くり返し何と言われても、行った先を饒舌(しゃべ)らなかった事は言うまでもない。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と押(おっ)つけるように出してくれる。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)