折合おりあい)” の例文
御倉さんはもう赤い手絡てがらの時代さえ通り越して、だいぶんと世帯しょたいじみた顔を、帳場へさらしてるだろう。むことは折合おりあいがいいか知らん。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それに菜穂子を連れ戻して来たって、母と妻とのこれまでの折合おりあい考えると、彼女の為合せのために自分が何をしてやれるか、圭介自身にも疑問だった。
菜穂子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
茶も求めず、召使も呼ばず、一室を閉めきったまま、客の伝右衛門とあるじの数正とは、話がもつれて——何か、容易に二人の間の折合おりあいはつきそうもない。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
に於ても誠実が物を言う。僕は同僚との折合おりあいが好い。喧嘩をしてかえって別懇べっこんになったのもある。一杯飲んで胸襟きょうきんを開くと皆ういやつだ。渡る世間に鬼はないという諺はえらい。
ロマンスと縁談 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
勘定部屋の支配は特にめをかけてくれるし、同僚との折合おりあいも悪くはないようである。もちろん滝尾とのことは充分に注意するつもりだから、その点は安心していただきたい。
しかるに喜兵衛が野口家の後見となって身分がきまってから、故郷の三ヶ谷に残した子の十一歳となったを幸手に引取ったところが、ままの母との折合おりあいが面白くなくて間もなく江戸へ逃出し
わたくしが枕山の女芳樹女史を訪うて親しく聞いた所によると、捨吉は叔父次郎右衛門とは折合おりあいがよくなかったので、僅少きんしょう金子きんすをふところにして家を出で道中辛苦して尾張にったという話である。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
(8) 親や親類と折合おりあいの悪い夫
良人教育十四種 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「心配もしますわ、どこへいらしっても折合おりあいがわるくっちゃ、おやめになるんですもの。私が心配性なら、あなたはよっぽど癇癪持かんしゃくもちですわ」
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それに付け足して、Kが養家ようか折合おりあいの悪かった事や、実家と離れてしまった事や、色々話して聞かせました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ところが——先方さきでも器量望みで御貰おもらいなさったのだから、随分大事にはなさったかも知れませぬが、もともといられて御出なさったのだから、どうも折合おりあいがわるくて
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
せめて口中の折合おりあいでもと思って、少し抵抗しにかかると、足がすくんで動けなくなる。余は幾度いくたびか虫の音の中に苦しい尻を落ちつけようかと思った。ただ橋本に心配させるのが、気の毒である。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
赤シャツさんと堀田さんは、それ以来折合おりあいがわるいという評判ぞなもし
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)