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悽愴
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せいさう
天地間僕一
人、
鳥も
鳴かず。
僕は
暫らく
絶頂の
石に
倚つて
居た。この
時、
戀もなければ
失戀もない、たゞ
悽愴の
感に
堪えず、
我生の
孤獨を
泣かざるを
得なかつた。
すべて
人は
感情の
動物で、
樂しき
時には
何事も
樂しく
見え、
悲しき
時には
何事も
悲しく
思はるゝもので、
私は
今、
不圖此悽愴たる
光景に
對して
物凄いと
感じて
來たら
一ツとして、
悲慘悽愴の
趣を
今爰に
囁き
告ぐる、
材料でないのはない。
實に
悽愴極りなき
光景。