恍惚みとれ)” の例文
見物けんぶつあれと無理にすゝむる故毎度のすゝ然々さう/\ことわるも氣の毒と思ひ或日あるひ夕暮ゆふぐれより兩人同道にて二丁町へ到り其處此處そこここと見物して行歩あるく中常盤屋と書し暖簾のれんの下りし格子かうしの中におときといふ女の居りしが文藏不※ふと恍惚みとれさまたゝずみける佐五郎はやくも見付みつけなにか文藏に私語さゝやき其家へ上りしがやみつきにて文藏は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
如夜叉によやしやと思ひ込しいと物堅ものがたき長三郎も流石さすが木竹きだけに非れば此時はじめ戀風こひかぜ襟元えりもとよりしてぞつみ娘も見たる其人は本町業平俳優息子なりひらやくしやむすこ綽名あだなの有は知らざれどたぐまれなる美男なれば是さへ茲に戀染こひそめて斯いふ男が又有らうかかういふ女が又有らうかとたがひ恍惚みとれ茫然ばうぜん霎時しばし言葉もあらざりしが稍々やう/\にして兩個ふたり心附こゝろづいてははづか
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そゝぎ掛け忠兵衞なれば恍惚みとれもせず其儘おくへ入たればよくは見ねども一寸ちよつとるさへ比ひまれなる美婦人と思へばうちの若旦那が見染みそめて思ひなやむ道理だうり要こそあれと主個あるじに向ひチト率爾そつじなるお願ひにて申し出すも出しにくきが吾儕わたくしは本町三丁目小西屋長左衞門こにしやちやうざゑもん方の管伴ばんたうにて忠兵衞と申す者なるが今日出番かた/″\にて御覽ごらんの通り丁稚こぞう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)