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恍惚
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みとれ
見物あれと無理に
勸むる故毎度の
勸め
然々斷るも氣の毒と思ひ
或日夕暮より兩人同道にて二丁町へ到り
其處此處と見物して
行歩中常盤屋と書し
暖簾の下りし
格子の中におときといふ女の居りしが文藏
不※恍惚し
體に
彳みける佐五郎はやくも
見付何か文藏に
私語其家へ上りしが
病にて文藏は
如夜叉と思ひ込し
最物堅き長三郎も
流石木竹に非れば此時
初て
戀風の
襟元よりして
慄と
染み娘も見たる其人は本町
業平俳優息子と
綽名の有は知らざれど
比ひ
稀なる美男なれば是さへ茲に
戀染めて斯いふ男が又有らうか
斯いふ女が又有らうかと
互に
恍惚茫然と
霎時言葉もあらざりしが
稍々にして
兩個が
心附ては
羞は
注ぎ掛け忠兵衞なれば
恍惚もせず其儘
奧へ入たれば
能は見ねども
一寸見るさへ比ひ
稀なる美婦人と思へば
家の若旦那が
見染て思ひ
惱も
道理要こそあれと
主個に向ひチト
率爾なるお願ひにて申し出すも出しにくきが
吾儕は本町三丁目
小西屋長左衞門方の
管伴にて忠兵衞と申す者なるが今日出番かた/″\にて
御覽の通り
丁稚を
“恍惚”の意味
《名詞》
恍惚(こうこつ)
何かに心を奪われうっとりすること。また、そのようなさま。
意識がぼんやりしていてはっきりしないこと。また、そのようなさま。
認知症で脳の機能が低下しているさま。
(出典:Wiktionary)