性来うまれつき)” の例文
旧字:性來
「はい、願掛けをしましても、塩断ちまでしましたけれど、どうしても分りません、調子が一つ出来ません。性来うまれつきでござんしょう。」
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こんな文句を毎日眼の前におきながら、弁当をぱくついてゐた雪堂といふ百人頭は性来うまれつきはぐきつよい、胃の腑の素敵に丈夫な男だつたらしい。
長「そりゃア旦那が勝手に仰しゃったので、わたくしが千両下さいと云ったのじアねえのです、わっちア賭事ア性来うまれつき嫌いです」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「その癖朝湯に行ける日は、きっと寝坊ねぼうなさるのね」と細君は調戯からかうような口調であった。小六は腹の中でこれが兄の性来うまれつきの弱点であると思い込んでいた。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
相当の成績をもって二人にまみえるためには——と、ここで性来うまれつき人なみ外れて身が軽く、それに山奥育ちで木登りは十八番おはこ、足も滅法早いところから、さっそく盗賊に早変り
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「どうせ、私は不幸の性来うまれつきですよって、覚悟はしてます」
俗臭 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
コスチウスコオは性来うまれつき慈悲深い男だつた。慈悲深いといふのは、美しい指環のはまつた手で慈善音楽会の切符を押売する事を言ふのでは無い。
アノわたしはね、浜町はまちやう待合茶屋まちあひぢややでございますがね、うもあたし性来うまれつき世辞せじがないんですよ、だもんだからおつかさんが、手前てめえやう無人相ぶにんさうぢやアいお客はやしないから世辞せじを買つていと
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「僕の父は金儲かねまうけと道楽が好きだつたが、性来うまれつき父に及ばない僕等兄弟は父の才能を二人で分担して、兄は金儲を、僕は道楽の方をる事にめてゐるのだ。」
仙「大丈夫でえじょうぶだよ、性来うまれつき不死身だから斬られても大丈夫でいじょうぶだよ」
日本では老年としより議員といふと、義歯いればの口で若いをんなの名前を覚える位が精々だが、このキヤノン爺さんは、性来うまれつき歯が達者なので、何よりもぎ立ての玉蜀黍を食ふのが一番好物だといつてゐる。
もしか性来うまれつき脚が達者だつたら、氏はかきになぞならなかつたかも知れなかつた。だが、絵の方がだん/\うまくなつて来ると、氏は多くの画かきのする写生旅行といふものがてみたくなつた。