かい)” の例文
大亀だの、阿能十だの、三平だの、お島だのという誇悪と社会反逆をかいとする不良の徒も、毒茸のように、生え揃って来たものだった。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しきりに彼女らの恥ずかしがる言葉をささやいて、ひそかに復讐ふくしゅうの一種を遂げることが、森林ではできない。そういうかいる機会がないのだ。
ヤトラカン・サミ博士の椅子 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
先を見ずにその場にて一時のかいむさぼる極めて短慮な者には、内容のさらにない雄弁をふるってみたり、あるいは大声たいせいかつ、相手の人には痛くもない讒謗ざんぼうや冷評をあびせかけて
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
苦しみそのものの催眠作用にとらわれてしまった結果であろうか? それともまた手傷てきずを負った兵士が、わざわざ傷口を開いてまでも、一時のかいむさぼるように、いやが上にも苦しまねばやまない
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
やがての、仁和寺にんなじ行幸みゆきには、心ゆくばかり、きそうて、春の口惜しさをそそぎ、かたがたとともに、かいを叫びたいと存ずる。
しかるにたびたび言うとおり僕は他山たざん瓦礫がれきとらえ来たって、自国の璞玉たまに比してみずからかいとするのなることを信ずるから、常に他山の石をりて自分の玉をみがくの用に供したいと思う。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
なぜならば、人生とは、母胎の陣痛から始まって、すべてのかいは、苦を越えなければつかみ得ないものになっているから——というのである。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
浪にゆられながら、かいを叫んでいたが、旅川周馬、まだよろこぶのは少し早かった。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三度は喧嘩掠奪のかいをむさぼった青年期もあったが、幼少から通っていた兵学の師毛利時親の本心に疑いをもちだし、またほかの学問へ身を入れたり、妻子と愉しむ日を無上として来てからは
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、がやがやかいを叫びあっていた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、かいを発して叫びました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)