志道軒しどうけん)” の例文
真三は、この膏濃い入道は、処も、浅草だと言う……むかしの志道軒しどうけんとかのながれを汲む、慢心した講釈家かなんぞであろうと思った。
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
づめ志道軒しどうけんなら、一てんにわかにかきくもり、あれよあれよといいもあらせず、天女てんにょ姿すがたたちまちに、かくれていつかたらいなか。……
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
同じ拗者仲間の高橋由一たかはしゆいちが負けぬ気になって何処どこからか志道軒しどうけんの木陰を手に入れて来て辻談義つじだんぎ目論見もくろみ、椿岳の浅草絵と鼎立ていりつしておおいに江戸気分を吐こうと計画した事があった。
志道軒しどうけんの孫弟子なにがしの辻講釈つじこうしゃく、冬の陣における真田父子さなだふしの働きぶりをたたきにたたいておりますが、戸板にかこまれた木戸銭の影もまばらで、このならびでは一番の不入り
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
奇人連中の寄合よりあいですから、その頃随分面白い遊びをやったもので、山門で茶の湯をやったり、志道軒しどうけんの持っていた木製の男根が伝っていたものですから、志道軒のやったように
おがみたさの心願しんがんほかならならなかったのであるが、きょうもきょうとて浅草あさくさの、このはるんだ志道軒しどうけん小屋前こやまえで、出会頭であいがしらに、ばったりったのが彫工ほりこうまつろう、それとさっしたまつろうから
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
名古蝶なこちょう八の物真似ものまね一座を筆頭に辻能つじのう豊後節ぶんごぶしの立て看板。野天のでんをみると、江戸のぼりの曲独楽きょくごま志道軒しどうけんの出店。そうかと思うと、呑み棒、飴吹あめふき、ビイドロ細工、女力士と熊の角力すもうの見世物などもある。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そいつをいかさまだかさかさまだかにつるさげて、ものにしたといちゃァ、志道軒しどうけん講釈こうしゃくじゃねえが、うそにもさきかねえじゃいられねえからの。——相手あいて橘屋たちばなや若旦那わかだんなだったてえな、ほんまかい
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)