役僧やくそう)” の例文
吸物のふたを取ると走りの松蕈まつたけで、かうばしい匂がぷんと鼻にこたへる。給持きうぢ役僧やくそうは『如何どうだ』といつた風に眼で笑つて、してつた。
茸の香 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
いわれて、おかみさんがとんでいってみますと、やっぱりご主人しゅじんです。役僧やくそうは、すみっこにへたばって、うんうんうなっていました。むりもありません。
夕方になって、役僧やくそうが、夕べのかねを鳴らすために、教会の中へはいっていきました。ふと見ると、聖壇せいだんの前に、アンネ・リスベットが、ひざまずいているではありませんか。
其頃岡崎から程近ほどちか黒谷くろたに寺中ぢちう一室ひとまを借りて自炊じすゐし、此処こヽから六条の本山ほんざんかよつて役僧やくそう首席しゆせきを勤めて居たが、亡くなつた道珍和上とも知合しりあひであつたし、う云ふ碩学せきがく本山ほんざんでもはばいた和上わじやう
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
願ひ度と云けるに役僧やくそうは其方は何者なるやととふに三五郎ハイ私しは相良領水呑村の百姓三五郎と申者御住持樣へぢきに御目通の上御願ひ申上度儀御座るにより參りしなり何卒なにとぞ執次下とりつぎくださるべしと申ければ役僧はおれに申てもわかるものを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
けれども役僧やくそうは、若者わかものにおばけだと思いこませようと思って、なおも身動きひとつせず、じっと立っていました。それを見て、若者はまたまたどなりました。
ふみしめ徐々と出來る跡には役僧やくそう二人付そひ常にかはり行粧ありさまなりやがて門まで來り浪人にむか恭々うや/\しく是は/\山内先生には宜こそ御入來ごじゆらい成たりいざ御案内と先にすゝめ浪人らうにんおくする色なく引續ひきつゞいて隨ひ行ぬ扨此浪人の山内先生とは如何なる者といふにもと九條前關白殿下くでうさきのくわんぱくでんかの御家來にて山内伊賀亮やまのうちいがのすけしようせし者なり近年病身びやうしん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しかし役僧やくそうは、なあに、口さきだけで、そんなことはできまい、と考えて、あいかわらずだまりこくったまま、まるで石ででもできているように、つっ立っていました。